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15章『希望の光』5 ページ12

表紙を開くと、前書きも中表紙もなく、いきなり本文が始まっていた。どうやら本当に誰かの日記らしい。

『魔暦7235年、11月17日。僕は生まれた。もちろんこれを書いている僕はその17年後にいるわけだけど、自分が生きていた証を残しておきたいから、幼少期のことも書いていくつもりだ。

きっと僕のことを知りたいと思う人なんていないだろうし、むしろ記憶から抹消したい人の方が多いんじゃないかなと思う。だって僕は一族の汚点だから。

でも、もし不慮の事故(かもしれないし、『意図的な不慮の事故』かもしれない)で僕が死んだら、これ幸いとばかりに父さんは僕の部屋丸ごと消去魔法をかけてしまうだろう。そうなったら、生きていた証なんてどこにも残らない。

だから、この日記は常に自分で持ち歩いて、死ぬ瞬間に自分の手元から何処かの本棚に転送する魔法をかけておいた。(この魔法をかけるため、僕が家の書庫に何回侵入して怒られたことか。でも、仕方ないよね。だって書庫に入ることすら禁止させられてるんだから。)』

なかなか難しい言い回しや単語も多いが、リリシアには何とか読むことができた。どうやらアダルバートさんは男性で、今から30年ほど前くらいに生まれたらしい。案外最近の人だった。

「でも、そんなことより…この人、家族とどんな関係なのかしら。」
そうリリシアが呟いてしまうほどに、彼が『家族』に対して抱く否定的な感情は、文面からこれでもかという風に溢れ出していた。

何処かに転送するという魔法をかけたようだが、本棚ということだった。これでもしかけ間違えていたら、こんな変な世界には逆にどうかけ間違えたら転送できるのかレベルの間違いだ。流石にそれはないだろう。
尤も、もし本当にこの日記の持ち主が亡くなったことで転送されたのだったら、それはそれで問題だ。

そう思いながら、再び視線を日記に落とす。

『まあ、父さんの気持ちもわからなくもない。だって代々続く闇獣、『霧豹(きりひょう)』のプリゼノの家系に、僕みたいなのが生まれたら、それは不愉快だろう。』

霧豹、そしてプリゼノ。聞き覚えのある単語の中に、さりげなく不穏な単語が混ざっていた。

『闇獣』

何だろう。この単語は。
おそらくプリゼノや精獣に関連する言葉だろうが、何処か黒い気配を感じずにはいられない単語だ。

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設定タグ:魔法使い , 魔法学校 , 明咲こより   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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明咲こより - 美坂るぅさん» 了解致しました。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» そうですね、消しておきます。どうやらコメ欄とボタンの色がコピーできていないようですので、ひつようならよろしくお願します。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» できました!画像が重なってしまっているのは、自分で調べて直します!作成して下さり、本当にありがとうございました。それから、パスワードが書いてあるコメントは消去した方が宜しいのでしょうか? (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» 了解です。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» 申し訳ありません…urlを入れているのですが、画像が表示されません。もう少し試してみますので、少々お待ち下さい。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:明咲こより | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年1月2日 19時

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