夕空に。 (ページ1)

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先程まで一緒に学校にいた四葉さんを連れて、病室に着くと既に兄さんと彼女の両親、彼女の担当医、そして何故か七瀬さんがそこにいた。

「はぁっ、はぁ…………っ、Aさ、」

「ちょ、いおりん、待てって！」

「一織、環まで………」

「いや、俺はいおりんと学校にいたんだけど、そしたらせんせーが急に」

彼女は幼いときに病気を患い、本当に、中学から今日までは何事もなく過ごせていたのに、急に倒れただなんて聞いたら飛び出すだろう。現に先程までその状態であったが。

「………一織くん。あのね…………」

彼女の母親はもう彼女はもう長くないのだと、そう私に告げた。

「＿＿＿＿そんな、」

コツコツとベッドに近づけば、沢山の管に繋がれた彼女。かろうじて意識はあるようで、虚ろながらも、その瞳は私を捉えていた。

『いお、り』

「喋らなくていいですよッ…………Aさんが倒れたと聞いて、私は、私はッ＿＿＿！！」

『いおり、わ、たし…………ききたいこと、がね、あるの…………ッ』

『ゆうひ、がきれい、………………ね、きか、せてくれ、る…………？』

ふと、外を見た。もう既に時刻は6時をとっくに過ぎていて、夕空が幻想的な景色を醸し出していた。

一瞬、彼女の意図が読めなかった。けれど、思考はすぐに塗り替えられていく。

【夕日が綺麗ですね】。それは、ただの外の風景を表現したものでは無いのだと、確信して。

「……………月が、綺麗ですね。
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貴方をずっと、愛しています」

そっと彼女の手を握って、涙がこぼれるのを必死に抑えながら、彼女の瞳(め)を見て言う。
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ああ、本当は、こんな所で言うはずではなかったんですけどね。

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貴方と、ふたりきりの時に言うつもりだったのに。

彼女は少し目を見開いて、涙を流した。

『う、ん……………！

わた、しも、だいすきッ……………』

『い、おり』

『あ、りが、とう』

「A…………？ダメッ、逝かないでッ！！！」

「Aっ…………」

「Aちゃ、」

少しずつ、彼女の目が閉じてゆく。

「…………Aさん、」

呼吸する音が小さくなってゆく。

「ッ……………」

涙が頬を伝う。

無機質な機械音が鳴り響いて＿＿＿＿＿
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ある夏の暑い日、夕方。

彼女は、その生命(いのち)の灯を消した。