然るべきは ページ23
.
口うるさく言いながらも、妹を相手するように笑っていた降谷は漂い始めた苦い匂いに眉をしかめた。
「あなた本当に息するように煙草吸いますね。取調室で吸い始めたときは、昭和のテレビより様になってましたよ」
心底嫌そうに言う降谷に反して、赤井はそのポーカーフェイスを崩さないままだった。
「‥‥夢を見るのと一緒だ。その時だけは、現実を忘れて幸せでいれる」
寂しそうに、ぽつりと落ちた言葉に、新堂は酒に伸ばしかけていた手を止めた。動かした視線が合うことはなかったが、それはわざとのようで新堂はただじっと赤井の指に挟まれた煙草を見た。
煙は上がり続ける。
灰は崩れ落ち続ける。
赤井さん、新堂はその名を呼ばなくてはならない気がした。きっと、後悔してしまうと。
しかしそれは、赤井に話しかけるジョディの声に遮られてしまった。
.
「ちょっとシュウー！煙草ばっか吸ってェ、私の話聞いてるの？」
人間お酒でここまで変わってしまうのか、と屍2体、茹で蛸1体わずか1時間30分の出来事に、新堂は困ったように髪を耳にかけた。
『ほら、ジョディさん。お話なら私が聞きますよ、仕事から恋、愚痴にのろけ話、アングラまでどんと来いですよ』
両手を広げて見せた新堂に、何故かジョディは納得した様子で。ジョッキに残っていたビールをすべて胃へとおさめて、口を開いた。
ちらり、と新堂は横目で赤井を見たが、さっきまでの会話は何もなかったように、煙を吐いて降谷に口うるさく言われているようだった。
「あのねえ、ヒナ！人の持ち物を盗ったら犯罪だけど、人の恋人を取ることを罰する法律はないのよ〜！」
急に何の話だとつっこみたくなるところではあったが、お酒と同時にその言葉は飲み込むことにした。
『妻子持ちじゃなければですね。浮気は精神的暴行って言いますし、訴訟起こされたら負けちゃいますよ。ま、倫理にはガッツリ引っ掛かりますけど』
「人は簡っ単に心変わりするの、じゃなきゃこの世界に離婚届なんて要らないもの！」
バツイチのような貫禄があるが、結婚したことはなければ、現在絶賛彼氏募集中の女の言葉である。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2021年9月16日 19時
