ふたりの愛情論(仮)【赤井秀一】 (ページ7)

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車中の会話ページ7

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喧騒漂う街を抜ける。赤のランプが点れば、車は止まる。緑のランプが点れば、車は発進する。

その行為を繰り返しながら、社内で会話は続いていた。いや、どちらかがうんというまでこの会話は終わらない。会話どころか、この問題を終わらせることが出来るのは、もうこのふたりしかいないのだ。

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『風見は昇進したくないの？あんなに降谷さんに憧れ抱いてて』
「それとこれは別の話だが。したくないと思ったことはない。今が一番仕事にやりがいを感じてるが、いつかは第一線を外れなければならないことも知っている」
『だったらもってこいじゃない』
「役職に就くと言うのは、上の役職の候補になるのと同じことだ。結局、管理職には年齢制限がある。降谷さんは、異例の早さだ」

ぶるるーん。ぶーん。

バイクが横を通り抜ける。高級車のエンジンは、静かに燃え上がる。

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「降谷さんの後継人になるのも、魅力的な話だ。だからこそ、思ってる」

『「降谷さんの後継にはお前が相応しいんじゃないか」』

ふたりの声が重なった。

ぶるるーん。ぶーん。ぶーん。

バイクの音は、遠くで響く。
助手席に座っていた新堂は、ふっ、と片方の口角を上げた。

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『それ、聞き厭きたわ』
「俺も言い厭きた」

結局のところ、ふたりも同じ場所をぐるぐると回っているのだ。
ハタから見て潮時だから、と言われたらどんなに楽だったろう。

『あ、ほら食えない女ってだけで嫌われる時代だから』
「お前は元々、上層部に嫌われている」
『ほらそれ、私女だから管理職とかなれないから』
「いつも言われたらブチ切れることを武器にするな。管理職なんて名ばかりだ。降谷さんはいつも、最前線にいた」

はあ、女がひとつため息をつく。
ふう、男がひとつため息をつく。

『何これめんどくさ』
「同感だ」
『結局、私らがうだうだ言ってもしょうがなくない？』
「流れに身を任せよう」
『そう言う方向で』

ふたりをのせた車が、夜の帳に消える。つう、とテールランプの一筋の光が道を作る。

今日も公安警察の夜は終わらない。

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