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のそり、と寝返りをうった。
閉めきったカーテンの隙間から見える窓の外は、まだ薄暗い。
真っ白なシーツから腕を出し、チェストに置いてある鞄からスマホを取り出す。
ー05:02
寝過ぎた、と小さく息を吐いた女は顔にかかる髪をかきあげる。
ひんやりと冷たさの残る空気に、伸ばしていた腕をスマホごとシーツに戻した。
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真っ白な天井を見上げ、どうしようかと思案したところで、ゆっくりと視線を右にずらした。
視界に入るのは、目立たない小さな傷がいくつかある、幅広で引き締まり鍛え上げられた背中。
変わった男だった。
するりと人差し指で男の背中にある傷のうちのひとつを撫で、起こさないように静かにベッドから滑り出る。
とっ散らかったままの下着と昨日着ていた服を両手に、洗面所へと歩みを進める。
服を身に付け、鏡に向き直り予定を考え直す。
今日は昨日揉めた上司ともう一度やりあわなければならない。そのために、まず家に帰ってシャワーを浴び直し、着替えに化粧。
後輩と連絡を取って、報告書を持って上司のもとへ。
『‥‥よし』
両頬を軽く叩いた女は、ベッドルームへと戻り、まだ眠る男のベッドサイドにきっちり半分、お金を置いて部屋を出た。
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昨日の行為に、欲を満たす以外の意味なんてない。
ただ、昨日の男はかなりの
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作者名:ハル | 作成日時:2021年9月12日 0時