Another Round

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Aが店を訪れ、15分ほど過ぎた頃。

店の外に吹き抜けた風が、ガタガタと窓を揺らした。ふとそれに気付いた安室は、コーヒーメーカーに目を向けた。

「梓さん。ホットコーヒーの量を少し増やしましょうか。秋風が吹き始めたようですから」

「やだ、もうそんな季節ですか？つい最近、子供たちが夏休みに入ったばかりだと思ったのに」

ふたりの和やかなやりとりに、Aはカフェオレを口にしながら微笑んだ。
喫茶ポアロは、梓の天真爛漫さと安室の些細な気遣いで成り立っているといっても過言ではない。

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「私、スーパーやコンビニに栗とかさつまいもを使ったお菓子が増えたら、秋だなあって思うんですけど、安室さんとAさんはどうですか？」

作業に一段落がついたのか、梓も暇な時間をもて余すようにふたりに投げ掛けた。

「僕は、金木犀の匂いをかいだら秋だなと思います」

『私は、ブラウンのリップを塗りたくなったら、ですかねぇ』

それぞれの秋に、確かに、と皆が首を縦に振る。
すっかり空になったグラスを置いたAは、一息ついて鞄から財布を取り出した。

「Aさんの言いたいことすっごく分かります。夏にワンピース着たくなるのと一緒ですよねぇ」

ニコニコする梓に伝票と共にぴったりのお金を渡し、鞄を肩にかける。
また来ますねと軽く挨拶を交わし、安室にも小さく会釈をして店の外に姿を消していった。

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