・ ページ42
.
「A〜、今日飲み行かない?」
訓練を終え、装備をロッカーへとおさめていく中、萩原の間延びした声が響く。班員からは、あんなにしごかれたのに、とか強いっすね、なんて声が上がる。
ヘルメットを外し、額に張り付く前髪を軽く払ったAは、嫌だときっぱり言った。
「なんでよー」
『暑い。ダルい。疲れた。シャワー浴びて早く帰って寝たい』
一刀両断するAに、萩原はいやらしい微笑みを浮かべた。
.
「伊達も来るって」
『前も会ったし、』
「陣平ちゃんも来るってー」
ぴくり。分かりやすく、Aの動きが止まる。その様子に勝ち誇った表情の萩原は、颯爽とヘルメットを脱ぎ髪を靡かせた。
『‥‥行く』
「そう来なくちゃね!いつもんとこな、伊達と陣平もう先に始めちゃってるらしいから、俺先いくぞー」
『え、待ってよ!』
「可愛くするのに時間かかるんでしょ、俺が場を温めといてやるから」
そのやる気はどこから来るのか、重苦しい装備をあっという間に外し、ひらひらと手をふる男は、装備ロッカーから出る直前。
「陣平ちゃん、ゆるくふわっとした髪が好きって言ってたな〜」
なんて言葉を残した。
.
『‥‥‥なによ‥』
きつく結っていた髪をほどいたAは、そっと優しく毛先に触れ呟いた。
.
51人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハル | 作成日時:2021年9月12日 0時