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部屋には、高級感のある家具とキングサイズのベッドが君臨するように置かれていた。
Aは、開け放たれていたカーテンの先に広がる夜景に吸い込まれるように足を進めた。
階下に星空が広がっているようで、思わず目を奪われていた。
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どれほどそうしていたかは分からないが、ふと急に後ろから、グッと強く腕を引かれた。
あまりに唐突の出来事で、半ば強引に体が男へと向き直っていた。男はとうにコートを脱ぎ、シャツのボタンをいくつか外し、腕をまくっていた。
腰をかがめた男の顔が思っていたより近くにあり、Aは思わず視線をそらした。
『何、っ‥‥‥』
女の言葉を遮るように、男は唇を合わせた。
女は最初、少し拒んだ。一夜だけの関係に口付けなど必要あるのかと言いたげな様子だった。男はそれに気付かないフリをして、独り善がりなキスを続けた。
貪るような口付けを続けるうちに、女は諦めたように男の首に腕を回した。
男は納得した様子で、そのまま軽々と女の体を抱えあげ、純白のシルクの海にそっと下ろした。
ビー玉のように透き通って、潤むように揺れる瞳と視線が絡んだ後、男は首筋に唇を這わせた。
『待って、カーテン閉めて‥‥』
「景色、気に入ったんだろう？」
企むような微笑みを浮かべた男は、意地悪い言葉を残して動きを止めなかった。
『明るすぎる。私たちが今からすることなんてただの紛い物でしょ』
譲れないと、女は男の肩を掴んだ。
すると男はゆっくりと顔をあげ、不思議そうに女を見た。
「紛い物？この行為がか？」
『お互い何を望むわけでもないでしょう？貴方には分からないかもしれないけど‥‥』
言葉を濁した女を尻目に、男はニヤリと笑って、挑戦的な瞳を魅せた。
「だったら今この瞬間を、君の目に焼き付けてやろう」
その言葉が、男の中のスイッチだったようだ。
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月12日 0時
