神楽とおしゃべり ページ23
「・・・お前が心配なんだよ・・・分かってくれるか?」
トシ兄は俺のほっぺをムニムニしながらしょぼくれた顔で見てくる。
『・・・・いつから俺の保護者になったんですか。そういうの・・・いりませんから・・・』
トシ兄が父上のように見えた。さっきの言葉も父上そっくり。俺の心が少し揺らいだ。
お前が心配だ?俺を置いて、残して行ったくせに・・・。どこが心配なんだ?結局は俺を殺して笑ってたくせに。
ギリッ・・・と口の奥で歯ぎしりが鳴る。無動作に両肩を震わせ拳を固めるを指が手に食い込むぐらいに。
「・・・・・・おい!」
『・・・・・・おやすみなさい』
俺は屯所の扉を勢い良く閉めて外に出た。誰もいない江戸の街に足を踏み入れたのだった。
シン・・・とした橋の上に立つ。丁度日の出辺りの景色だった。川に流れる水が朝日を反射する。
もう現時刻は午前五時半。
「ワンっ!」
「あっ、定春どこ行くネ!・・・・・・げっ」
白いもふもふが俺に飛びついた。その後ろに立つ少女。神楽ちゃんだ。彼女は俺を見ると凄まじい顔をした。そして何故か構えている。
『・・・・・お早う御座います』
「ゥワン!」
「けっ・・・挨拶なんか言われる筋合いなんかないアル」
『・・・嫌いな人でも挨拶は言うもんだから覚えておきな』
「誰がお前なんかに挨拶するアルか!ていうか!なんでお前・・・・・・そのカッコ・・・」
『・・・・・有給だけど?』
「・・・・・・や、休み?!ず、ずるいネ!」
『・・・・・・じゃあ休み貰えばいいんじゃない?年中無休なの?』
「・・・や、休みなんか取ったことないアル!というかくれないアル!」
『流石ブラック企業』
「んなっ!ぜ、税金を貪り尽くすお前ら税金泥棒に言われたくないアル!そっちの方がブラック企業アル!」
『・・・・・・それは・・・』
「・・・ブラック企業はブラックな服きてるアルな!わかりやすいネ!」
『・・・・・・仕方ないよ。そういうデザインなんだから・・・』
「・・・・・・今日、何だかお前元気ないアルな」
なんかあった?なんて聞いてくるもんだから顔を変える。
『変わってなんかないよ。何時もの俺だよ・・・』
そう、俺だ。変わらない俺。けど笑顔があんまり出ない。思い出せば思い出すほど胸が苦しくなる。
「どうしたアルか?」
神楽ちゃんは俺の顔を覗き込む。
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Lime(プロフ) - 【死神くんは真選組】めっちゃ面白いです!主人公の過去とかもしっかりしてるし想像力豊か!!僕原作沿いの小説苦手で非原作沿い漁ってたんですけどとてもいい作品に出会えました!!更新ゆっくりでいいので待ってます! (2022年7月5日 22時) (レス) @page48 id: 9dc1bcf53d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のろすけ | 作成日時:2019年6月17日 19時