俺の想い ページ17
シルクside＿＿＿＿＿＿
「思い出したんだ、あの頃のこと」
またいつものように病院に行ったら不意にヴェレがそんなことを言った。本当になんの前触れもなく、いきなり。
あの頃、ってのはヴェレが虐めに遭ってた頃のことみたいで、そんなこと思い出さなくても良いのになって思った。だってあれはヴェレにとって辛い思い出だ。
辛かったって言うと思ったら、ヴェレは“皆には感謝してるよ”って言葉をこぼした。あの日助けてくれたのは俺たちだって、彼女はそう言ったんだ。
それ以降の記憶はまだ思い出せてなくて今日の夜また眠るときを待ってるらしい。夢で記憶が蘇るってめっちゃ不思議なことなんだけどその内容は正確で疑う余地もない。
「私は随分皆と仲が良かったんだね」
ヴェレが新聞を眺めながらしみじみとそう言ってきた。確かにそうだ。俺たちとヴェレは誰よりも仲が良くて、勿論今も、そのはずだった。
あの事件で記憶さえ失わなければ今も仲良くやってるはずだったんだ。それなのにあんな事件に巻き込まれただなんてバカげてる。命があっただけマシだとは思っても記憶を奪い去ったことに納得出来るわけがない。
なぁ、なんでヴェレにばっか不幸が起こるんだよ。神様とやらがヴェレを気に入って傍に置いときたいからか？そんなの許さない。そんな意地悪な神様なんかにヴェレはやらねぇよ。
「近々退院出来るらしい。また、宜しく」
目が覚めて以来初めて見せた微笑みに俺は胸を高鳴らせる。お前が浮かべる微笑みはもう何度も見てきた。決して忘れない、脳裏に刻まれた幸せの欠片。
ヴェレの中での俺たちは高校三年生の夏で止まってる。だから今の俺たちに対しても“親友”という認識は持ってるし仲良くしようとも思ってるらしい。本人が言うんだから間違いない。
目が覚めた頃にあった壁は既に取り除かれた。でもそっから先はまだ空白。二十三歳である現在までの五年はまだ空っぽのまんまだ。
ヴェレはまだ知らない。あの日抱いた俺の想いを。あの日の告げたお前への想いを。
だけどそれを伝えるのは俺じゃない。前にも言ったけどそれはヴェレ自身で思い出すものなんだ。俺らはそれを見守るだけ。そうすることしか出来ない。
「今日も夢を見れるかな」
ヴェレは楽しそうに、でもどこか寂しそうにそう呟いた。今回の虐めの記憶だったり、ヴェレの中には“良い”とは言い切れない記憶がたくさんある。正直言って、思い出してほしくないものも。
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華影(プロフ) - うさこさん» マロだけでなくコメントも有り難うございます！！そろそろ続編に参りますので、そちらもお楽しみいただけたら……！！ﾊﾞﾘﾊﾞﾘ更新していきます！！ (2019年8月8日 10時) (
レス) id: 6fa3bd1abd (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 日々お疲れ様です。やっと読む事が出来ました！甘くてほろ苦い、青春の1ページを覗かせていただいてる様な感覚…キュッと胸が締めつけられる…この先の2人を見守っていたい…なんて事を思いながら更新を楽しみにしております。暑いのでお体に気をつけてお過ごし下さい！ (2019年8月8日 9時) (レス) id: 37a2b7b4f4 (このIDを非表示/違反報告)
華影(プロフ) - うさこさん» いつも有り難うございます！急に不安になるときってあるじゃないですか……そんなときメンバーの優しさが染みれば良いな、と。 (2019年7月24日 18時) (レス) id: 6fa3bd1abd (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 日々お疲れ様です！急に不安の波に飲み込まれそうになった主人公ちゃんに、メンバーの優しさがもう…うるっときてしまいました。 (2019年7月24日 9時) (レス) id: 37a2b7b4f4 (このIDを非表示/違反報告)
華影(プロフ) - うさこさん» いつもありがとうございます！よく少女漫画とかで見るありがちな展開だとは思いますけど、彼らに沿って書けたのではないかと思っております(^∇^)徐々に更新していきます！！ (2019年7月21日 10時) (レス) id: 6fa3bd1abd (このIDを非表示/違反報告)
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