灰色の町のノエル (ページ2)

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旅は焦らずゆっくりと。ページ2

｢よしっ｣

私、ノエルは次の町へ行くための旅支度をするために、この町で仮家としていた家を訪れていた。外観はぼろく今にも崩れてしまいそうだが中の設備は意外としっかりしていた。迷える〝ヒト〟が少なかったのでこの町を滞在したのはほんのわずかであったが、この家のおかげで快適なものだったと思う。

｢時計よーし、メモ＆ペンよーし、懐中電灯よーし、食べ物よーし！｣

紫の革製のリュックの中を確認し、チャックを閉める。

｢あとは……｣

私は壁に立てかけられた鋭利な鎌を見る。柄の部分に細かい白い薔薇の模様が彫られており、我ながらセンスのいいものを選んだと思う。肝心の刃も銀色に鈍く輝いており切れ味抜群と言った感じだ。
やっぱり鎌持って歩く女なんて物騒だよね…と、1人苦笑いしながら鎌を握る。

｢次の旅も、頼んだよトモダチ｣

にっこり笑って鎌に語りかける。漫画やアニメの世界ならここで｢おう、分かったよ相棒｣などと返事を返すかもしれないが、当然鎌はしゃべることはなく、自分の声が虚しく家の中で響くだけであった。
しかし、私の中では鎌は本当にトモダチのようなもので大切な存在だ。今度名前でも付けようかと考えながら、私はドアノブを捻り家の外へ出る。

さて、恒例行事の始まりだ。
ふぅーと息を吐いたあと、私は家の前に立ちぺこりとお辞儀をする。

｢少しの間でしたが、大変お世話になりました。お礼、といっては何ですが、キミ達の厄を祓いたいと思います。よろしいですか？よろしいですよね｣

返事が返ってくることはないので勝手に自己完結して鎌を振りかぶる。

これでおしまい。

もう一度お辞儀をして、家を背にして歩き出す。サクッ、サクッ、と灰のような土を踏みしめ次の町を目指してまっすぐ前を見据えた。

仮家は、跡形もなく綺麗に消え去っていた。

《あとがき》
完全に見切り発車です。すいません。
ノエルの服装は自由に想像してもらっていいですが、作者のイメージは群青色の長いローブに黒いタイツ、白っぽいスニーカーのような出で立ちです。