愛されみーちゃんの夏休み

帰り道の刺客（松村） ページ29

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『北斗、思ったよりも椅子だった！』


「うん、北斗ってか草太くんね。」


『北斗、女子高校生誑かしてた！』


「うん、だから北斗じゃなくて草太くんね。」







どうしても北斗と一緒に映画見たい！ってAが言ってくれて、映画を見終わって今。
平日だってのに東京だからか、思ったよりもお客さんも多くて、とんでもない作品に出させていただいたんだなってのを実感する。

適当にカフェに入って映画の感想を矢継ぎ早に伝えるAが可愛くって、うんうん、ってジッと見てれば「聞いてないでしょ！」なんて怒られちゃったりして。




思えば、Aはいつになってもこうやって誰かが単独で出てる仕事を大事にしてくれる。
映画でも、ドラマでも、出演してる作品は必ず見てくれて、それで感想をくれて…って。

ジェシーもそうだけど、Aも相当マメだよなぁ。
あんだけ見ない日はないってくらいテレビやら何やらに引っ張りだこなのに、それでいて俺らの仕事一つひとつ拾ってくれてんだもんな。






「ねぇ、…ありがとう」


『ん〜？何が？』


「何がってこともないけど。なんか、ありがとうなの。」


『変な北斗〜』







思いの外ぽかぽかした陽気の11月。
Aの頼んだアイスカフェラテのグラスの中で、なかなか溶けない氷がやっとカラン、と音を立てる。

目の前の名前は随分秋も深まるような装いなわけで。
モヘア素材のゆるっとしたワンピースから覗く細い鎖骨やら、すらっとした手脚が嫌に煽情的で身体に良くない。






「ねぇ、そっち行っていい？」


『ん？どうぞ？』






店に入った瞬間俺らに気づいてくれた店員さんが用意してくれた個室。
ローテーブルに、それを挟むように置かれた居心地の良いふかふかのソファ。
手触りのいいブランケットまで置いてあって、意外と芸能人慣れしてるお店なのかも知れないな、なんて考える。


呼ばなきゃ誰も来ないのをいいことに、テーブル席の斜向かいに座ったAの横へ。







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