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初めて会った時から薄々思っていたけれど、なんかこいつ、危機管理能力が低くないか…？
出会った時、明かりもない土手の橋の下でダンスの練習をしていたのを思い出す。
『たまに変なおじに撮られてたりするから警戒しちゃって』
そんなことを言っていたのを思い出す。
いや、撮られてんのかよダメだろ。
二、三度しか会ったことのない俺たちを平気で家に上げるし、今だっていつでも来いという。
もう少し…こう…男に対して警戒心を持った方がいいんじゃなかろうか。
とは思うものの照れくさくて言い難い。
彼女に対して気がありそう？な壮真はその辺どんな風に考えているのだろうか。
そう思って壮真の方を見つめる。
すると壮真もこちらを見ていたのか目が合った。
「なんですか？秀樹さん」
「いや、別に」
顔を背けると、視線を感じてそちらを見る。
Aが物珍しそうに俺と壮真を交互に見比べていた。
「ふたりって…なんかこう、不思議な空気感あるよね」
「は？」
「分かります？俺秀樹さんのこと好きなんで」
「また誤解を招くようなことを…」
俺が呆れ顔で壮真の方を見ると、そんな俺らを見て仲良しだっと彼女が笑った。
「秀樹さんも俺のこと好きですもんね？」
「いやまぁ後輩としては好きだよ」
「あ〜あ秀樹さんと会えなくなっちゃうの寂しいな」
「長岡くんどっか行っちゃうの？」
壮真の一言に不思議そうに彼女が問いかける。
「来月宮崎で大会あって、秀樹さんそれに出るんですよ。1ヶ月くらい会えないですかね」
「宮崎か〜遠いね〜でもそれがお仕事なんだもんね。凄いなぁ…」
「凄い…？」
「同い年なのに色んなもの背負って野球してるんだなって。かっこいいね。長岡くんも内山くんも」
ストレートな賞賛の言葉に少し気恥ずかしくなる。
そっと壮真の方を盗み見ると、やはり嬉しそうだった。
「でもそうか〜1ヶ月会えないのは確かに寂しいね」
「ですよね」
「内山くんいつも長岡くんと一緒だもんね」
「"そまひで"ですから」
「おい壮真…」
また余計なことを…
「"そまひで"って…？」
「俺と秀樹さんがいつも一緒にいるのでファンの方がそう呼び始めてくれたんです。俺結構気に入ってます」
「ああ、そうまとひできでそまひでか！なるほど！」
「いや納得しなくていいって…」
そのまま彼女はそまひで！とその四文字を連呼する。
気に入ったらしい。
そしてこれが彼女のそまひで推しの始まりだった。
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作者名：星見杏世 | 作成日時：2023年10月8日 3時
