16 ページ16
「Aさんおはようございます」
「あっ内山くんおはよう！」
秀樹さんが宮崎に旅立った翌日、いつものように朝のランニングをしていると土手に見知った背中を見つけた。
「またダンスの練習ですか？」
「そう！Heads or Tailsは覚えたんだけど次の曲〜内山くんは今日は一人？長岡くんは？」
「秀樹さん宮崎で大会あるんですよ。それに出るために昨日宮崎に立ちました」
「そういえばそんなこと言ってたね！宮崎か〜遠いね…でもなんか変な感じ」
そう言ってこちらを見る彼女にピクリと反応する。これはもしや。
「？」
「いやほら、私たちが出会ってから内山くんと長岡くんいつも一緒にいたじゃない？だから二人が一緒じゃないのなんか新鮮だなぁって。なんか寂しいね」
“寂しい”というワードを使う彼女に一抹の不安が過る。
これは、秀樹さんがいないから寂しいのか、俺の隣に秀樹さんがいないことに寂しさを覚えているのかどちらだろうか。
後者であってほしいが、前者であることを否定することは俺にはできない。
「はは、俺たちセットみたいですね」
「ね！でもやっぱ変な感じ。早く帰ってきてほしいね」
「はい。俺も寂しいです」
変な感じという彼女にわざとあからさまに寂しい振りをする。
タネはなるべく多く蒔いておかねば。
「長岡くーん！内山くんが寂しがってるぞー！結果残して早く戻ってこーい！！」
彼女はふふっと笑ってからそう川岸に向かって声を上げた。
よし。先ほどの不安はどうやら心配無用だったようで胸を撫でおろす。
なるべく近いうちに畳みかけた方がいいだろう。
「Aさん、今度ご飯行きませんか？」
「えっ急だね！？わ、でもいいよ行こ行こ！野球のこととかもっと教えてほしい！」
「ありがとうございます。じゃあまた連絡しますね。練習頑張ってください」
「ありがとう〜内山くんも頑張ってね！」
そう言ってひとまずその場は彼女と別れる。
とりあえずAさんが既に俺と秀樹さんをセットのように思っていてくれたのは想定外だけどいい収穫だった。伊達に秀樹さんと一緒にいないな自分、と妙に感心した。
会う約束も取り付けられたし、なかなかことがうまく運んでいることに安堵感を覚える。
次会う時までに、俺たちの写真とか色々拾い集めておくか…
そう思いながら、再び寮までの道を走り出した。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←15 33side
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星見杏世 | 作成日時：2023年10月8日 3時
