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「隠すな、見せて」
「待ってほんとにまっ」


Aの腕を捉えて彼女の顔の前から取り払う。


「耳まで真っ赤」
「ごめっほんと手、離して、恥ずかし」


耳まで赤くして瞳を湿らせる彼女に若干の加虐心を覚える。


「俺のことかわいいって言ったからやだ」
「や、ほんと、ごめっ、恥ずかしいの」


Aの両の手を捉えたまま、彼女を見つめる。


「なんで隠すの、そんなに恥ずい?」
「恥ずいから、離してって言ってるの…!ほんと、も、ゆるして、」
「やだ、もっと見たい」
「"秀樹"のイジワル」


そう言って濡れた瞳で彼女がキッとこちらを睨む。
下の名前で呼ばれたのと、彼女の表情が相まってドクンと心臓が鳴る。
やば、これはちょっとクセになりそう…


「ね、ほんと、そうまに見られたくないから、離して」


明らかに俺がイニシアチブを握っていたのに、壮真の名前が出てきてムッとする。


「なんで?壮真に見られたくないの?」
「ただでさえ恥ずかしいのに壮真に見られたら恥ずか死ぬっ、、」
「見せてあげれば?その真っ赤な顔。壮真どんな反応するかな」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


怒りと驚きが混ざったような表情をされて、我に返る。
やべっ、ちょっとイジメすぎたな…?

慌てて彼女の手を離すと、彼女は俺の手を振り払うように立ち上がる。


「秀樹のばかっ」


そう言って洗面所に駆けていった。


「ちょっとやりすぎたな…」


虚空にそう呟く。
壮真に「変な気起こすな」と言われていたのにおおよそその通りになってしまって今度は俺の方が恥ずかしくなってきた。

『手、離して、恥ずかし』
『も、ゆるして、』

数分前の彼女の言葉と表情を反芻する。
いつも気丈で笑顔の絶えない彼女の新たな一面に胸騒ぎが止まらない。
そもそも、異性とここまで親しくすること自体初めてで、あんな風に加虐心を駆り立てられたのももちろん初めてだった。

ずっと壮真があいつのこと好きなんじゃないかと思ってたけど、壮真じゃなくて俺なのでは…?

これは、好きな子ほどいじめたくなるとかいうアレなのでは…?

そんな考えが脳裏を過ぎる。

てか、A怒ってるよな…謝らなきゃ…


立ち上がって洗面所の方に向かうと、ちょうど洗面所から出てくるAと出会した。
 
 
 
 
 
 

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作者名:星見杏世 | 作成日時:2023年10月8日 3時

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