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「ところで君たちこんな時間に何してたの？ランニング？」
「はい、まあ」
「へ〜真面目だね〜家近いの？」
「そんな感じです」
そんなやり取りを彼女と壮真がする。
俺たちのことは知らないようだし、どこまで話していいものか少し迷った。
俺たちのことを知っていてキャーキャーされるのも本意ではないが、かと言って全く知らなそうなのもちょっと堪えた。
まぁ、俺たちアイドルじゃないしな…いちプロ野球チームの若手なんて野球ファンでもなきゃ知らないよな…
そう自嘲する。
「そまひで」なんて言われてちょっと浮かれていたが、一歩球場の外に出れば所詮自分たちの認知度なんてこんなもんだよなぁと突然現実を見る。
「秀樹さん？どうしたんですか？」
そんなことを考えていると隣にいた壮真がこちらを覗き込んできた。
「あ、いや別に」
「大丈夫？具合悪いの？」
隣にいた彼女も一緒になってこちらを見る。
「大丈夫だって！てか、あんたは？こんなところで何してたの？」
「私？見ての通りダンスの練習〜今週中に覚えなきゃなんだけどまだ振り入れできてなくて…」
そう言いながら、彼女はくるっとその場で回って見せた。
「あ、そう言えばHeads or Tailsがよく知った曲って言ってたよね？EXILE好きなの？」
「え、うん、まぁ…？」
「俺めっちゃ好きです、ライブとか行きます」
「え〜そうなんだ！長岡くんのその微妙な感じは何笑」
俺の登場曲ですといきなり言うのはなんか違う気がして、曖昧な返事を返す。
「あのごめんちょっといい？」
「うん？」
「なんすか秀樹さん」
一言彼女に断って壮真の裾を引っ張る。
そのまま少し彼女から距離を取って、壮真に耳打ちした。
「なぁ、俺たちのこと黙ってた方がいいよな？」
「別にいいんじゃないですか？言っても。別に俺たち大人気アイドルとかじゃないんですし、一応は職業ですし」
「そうかぁ…？」
「この辺に寮があるのは知ってる人は知ってますもん。俺たちのこと知らないってことは野球興味無いんでしょ。興味無い人なら差程騒がれないと思いますよ」
「なるほど…？」
そう言う壮真にそれも一理あるなと頷く。
そのまま彼女の方をちらっと見ると、俺たちのことは気にせずまたダンスの練習とやらをしていた。
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作者名：星見杏世 | 作成日時：2023年10月8日 3時
