10話 ページ10
優しく微笑む彼女の姿は無く、こちらを見下す様に嗤い、ペラペラと喋り出した
「貴方の事を健気に想い、いつも悲しそうにしていたAちゃんに私は少しのアドバイスをしたの
"自分の気持ちを我慢するのは良くない"
ってね？そしたらそのアドバイスを鵜呑みにしちゃって…貴方に振られるのは一目瞭然だったのに
今Aちゃんがいないのも貴方が振ったからでしょ？
あーあ、どこまでも可哀想な子
好きな人は見て貰えず、挙げ句の果てには"期待"し、膨れ上がった想いは壊されてしまった
ほらね？Aちゃんの事なら何でも知ってるでしょ？」
そう言ってクスクスと笑う目の前の彼女
彼女の醜い姿と彼女の言った言葉に頭が混乱し、真っ白になっていく
「どうしたの？そんなに驚いて…まさか自分の好きな人がこんなはずないって思っているわけ？」
そうだ…俺が想ってきた彼女はこんな酷い奴じゃない
もっと優しくて、健気で…素晴らしい夢を持っていて…ッ！
「そもそも、貴方を相手にする訳ないじゃない。知ってるよ？貴方が失敗作で堕天した事を。
そんな人考えられない」
俺の期待はあっけなく壊され、ガツンッと頭を打たれたような錯覚に陥り、膝から崩れ落ちる
「大切なパートナーも失い、想いの人までも失った貴方。可哀想に…でもこっちは充分楽しませてもらったわ、じゃあね？哀れな死神さん」
そう言って彼女は去っていく
…俺はずっと騙されていたのか？
なら彼女への今までの想いは何だったんだ？
そして彼女がAに変なことを吹き込まなければAが俺の側から離れる事は無かったのか？
…俺はこのまま全てを失うのか…？
そんなことあってたまるかッ…
彼女のせいで俺は…俺は…ッ！！
バッと立ち上がり、彼女を追いかけようとするが透明な壁が阻む
「…〜〜ッふざけるなッ！！
…返せよッ…俺の想いも…Aもッ！！」
ガンガンッ！と透明な壁を怒りに任せて鎌で殴り続ける
すると突然振り向く彼女
「貴方の想いを奪ったのは確かに私…
だけどAちゃんを傷つけ、捨てたのは貴方でしょう？」
…俺がAを傷つけ、捨てた…？
「その様子じゃAちゃんに対して自分がやってきた事の重大さに分かっていないようね…ほんとどこまでも哀れで惨めな死神」
そう呆れたように此方に告げ、再び向こうへ歩き出す彼女
「どういう事だよッ！！俺がAに何をしたっていうんだよッ！！？」
そう叫んでも彼女が振り向く事はなかった
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作者名：Omiso
| 作成日時：2018年6月23日 21時
