6話 ページ6
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甘くて苦い彼の口付けは私の気持ちをぐちゃぐちゃに掻き乱す
そっと目を開けるとジッと此方を見ている彼
その真っ赤な目にはやっぱり私は写っていない
「目瞑れよ…」
口を一旦離して彼はそう言う
けれど私は目を閉じたくなかった
…彼に私を見て欲しい…
そんな想いでジッと見つめるとハァーと溜息をつく彼
「あァー、悪かったな。外なのにこんな事やっちまって…嫌だっただろ？」
違う…そんな意図で貴方を見つめた訳じゃない
「なんだよ、そんな不満そうな顔して？
心配しなくても帰ったら可愛がってやるよ」
そう言い、ポンッと私の頭に手を乗せる
何も分かっていない…
…いや…分かるはずがないのかな…
「ほらもう帰るぞ、腹も減ったし何より疲れた」
そして私の腕を掴みズンズン歩き出す彼
そんな彼の後ろ姿をぼんやりと眺める
彼と一緒に過ごせて、彼と恋人のようにいられた今までの時間
本当の愛はなかったけど確かに大切で幸せな時間だった
そんな幸せな時間をこれからも保つためにはきっと私はこれ以上欲張ってはいけないのだろう
けれどこの溢れかえる貴方への想いを我慢できそうにない
それに…
少し前に"あの子"が私に言ってくれたんだ
"自分の気持ちを我慢するのは良くない"って…
…言わなければ…私の本当の気持ちを…ッ
「13…」
そう名前を呼ぶと振り返る彼
「あっ？どうしたんだよ？」
かったるそうに振り向く彼
そんな彼に私は期待を込めて気持ちを贈ろう
「私…貴方が好きだよ…」
彼の赤い目を見つめ私は彼に想いを告げた
すると彼の目は大きく見開き此方を凝視する
だがしばらくして気まずそうに口を開いた
「……ッなに言ってんだよ…？…ッ…突然どうしたんだよ？…」
無理に口角を上げて笑い、返事をうまくはぐらかす彼
私から彼に好きと言ったのは初めてだった
いつもの私は、彼の嘘の愛を黙って受け入れて何となく返事をするだけだったから…
でも、やはり彼は私からの愛は要らないようで、歯切れが悪そうに答え、そして返事をはぐらかした事がそれを証明していた
勇気を振り絞り、彼に伝えた愛は呆気なく砕け散った
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作者名：Omiso
| 作成日時：2018年6月23日 21時
