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9話 ページ9

〜〜

「…あれ?ここは?」

フカフカのベッドの上に眠っていた私は何故だか何も思い出せない


「Aさんッ!!」


ギュッと私を抱き締めるこの人も


「Aちゃん!!」

「A!!」


私を囲んで涙を流しながら名前を呼ぶ人達も


皆んな、皆んな誰だか分からない


でも、一つだけ引っかかる



「…あの人は?」


「えっ…あの人って?」

「ほらあの人だよ…黒くてカッコよくて、私の大切な…」



大切な……




「…何故、貴方まで泣いているのですか?」



「えっ…」



ポロポロと自分の目から零れていく涙

理由もわからないまま涙は落ちていく


「もう、苦しまなくてもいいのですよ?…あの人はもういないのですから」


そう言って更に強く私を抱き締める綺麗な男の人



苦しまなくてもいい…?

あの人はもういない…?


…それでも…それでも私は…ッ


「ッあの人は、私にとって誰なのですか…?」


そう質問しても誰もが困った顔をするだけで答えてくれない


「どうして黙っているのですか…そんなに言いたくないのですか?」


少し強く問い詰めると周りの人達は更に顔を歪ませ、口々に自分自身を責め始めた



「ごめんな…ごめんなッ!」

「私が近くにいてあげれば…ッ…」




「…私が…彼に撃たれなければ…」





…違う、違うの……

欲しい言葉は謝罪じゃない

ただあの人の事を教えてくれればそれでいいのに…


けれどその想いが周りを苦しめている

なら私が今すべき事は…


「…なら…貴方達について教えてくれませんか?」


にこやかな笑顔を貼り付けて本当の気持ちを隠そう


そうするとほら、周りの人達は悲しい顔から笑顔に変わる



過去の記憶が無くても…

前の自分を知らなくても…



脳裏にぼんやり浮かぶあの人が誰だか分からなくても…



きっと…きっと私は幸せに…




けれど、心の奥底では叫び続けている


私はあの人を思い出したい

いや…思い出さなければいけない

そうじゃないと私はいつまでも先に進めない


私の大切な人…大切なあの人は…ッ!!!



心で叫び、静かに涙を流す彼女にヒーロー達は誰も気付かない

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作者名:Omiso | 作成日時:2018年4月28日 18時

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