２８話・零れ落ちる涙 ページ28
＿＿＿＿＿
ヒソカは恍惚とした表情をして両手を広げた。
「あぁッ…A、A、A！！！やっぱりキミは良いよぉ！その瞳、殺意、憎悪！誰よりも向けてくれることを夢見てた！！」
僕は今までずっと一番になれなかった。
憎しみを向ける相手は決まって父親だった。愛を捧げる相手はイルミだった。だから、壊してしまった。この世界のキミを。
「僕を殺したくてたまらないだろう！？だけど、今のキミは強さが足りない。だから、僕好みに一から育ててあげる。そして、ずっと二人きりで闘い続けよう！傷つけあって血濡れた舞台で誰にも割り込めない僕達だけの世界を作るんだ！」
かつてのキミと僕の関係に戻すんだ。
だけど、全部元通りではない。次は拒絶なんてさせない。僕がキミの全てにおいて一番になるんだ。
一番にその瞳に映りたい。
一番に僕だけを考えて欲しい。
一番に心から想って欲しい。
この溢れ出す感情を言葉に表せば、ただ一言だけだ。
「A、愛してる」
すると、彼女は憎悪を向けていた瞳を瞼の裏に隠して俯けば、静かにキラリと目元から何かを落とした。
「＿＿＿なんで…ッ…なんでそんなこと言うの」
そんなAの様子にヒソカは途端に心が乱され嫌な予感がした。今までの興奮が一気に冷めるような、夢に浸っていた甘い時間の終わりを告げられる気がした。
そうなる前に足を踏み出そうとしたが、遅かった。
「ヒソカ、私も愛していた」
「ッ！？」
顔を上げた彼女の頬に涙が流れていた。眉を寄せてこれまでにない哀しみに満ちた顔をしていたのだ。
押し寄せていた興奮が一気に引いていく。
泣き顔ほど素敵な表情はない。それなのにキミの泣き顔は…見たくなかった。
何故なんだ。父親を殺した時すら流さなかった涙をここで流すんだ。僕を見つめながら涙を流すんだ。苦しげに泣いて「愛していた」なんて過去形で告げるんだ。
まるで僕がしたことが全て悪かったように。取り返しのつかないことをしてしまったかのように。もう後戻りは出来ないとでも言うように。
「家族のように愛していた」
ドクンッ…と胸が高鳴るのと同時に酷く胸が痛み出す。
「孤独だった私の前に貴方が現れてから毎日が鮮やかに彩った。孤独を埋めて側にいてくれる貴方を…愛してた」
「〜ッそれならこれからだって！」
「だけど、もう無理だよ」
禍々しい憎悪すら宿さない瞳をこちらに向けて儚げな表情を浮かべるAにヒソカは息を詰まらせた。
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ササク(プロフ) - 滅茶苦茶面白かったです！でも、面白いという言葉で片付けることをしていいのだろうか…と思わされる程の作品でした！特に人の感情の描写がすごくて自然と、こんな気持ちもあったのかな？と考えさせられ惹き込まれました！素敵な作品をありがとうございます！ (2023年2月25日 9時) (
レス) @page37 id: ba5c48af12 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - チョコチップさん» チョコチップさん！コメントありがとうございます！終わりは原作の方と繋げようと意識していた部分はあったので気付いて下さってとても嬉しいです！前作に引き続き今作までお付き合い頂きありがとうございました！ (2022年6月21日 11時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
チョコチップ(プロフ) - 前作に引き続き、楽しく読ませていただきました！ヒソカなりの愛し方で夢主ちゃんと向かい合おうとしている姿がとても印象に残りました。終わりかたも原作の方に繋がるようなもので、とても読みやすかったです！更新お疲れ様でした！ (2022年6月20日 22時) (レス) id: ffec85aa52 (このIDを非表示/違反報告)
でぶき - こちらこそありがとうございやした!!!!!☺️☺️ (2022年6月20日 15時) (レス) id: 804c35253a (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - でぶきさん» でぶきさん！またのコメントありがとうございます！何度も素敵なコメントを送ってくださってとても励みになっていました！また、イラストも見て下さったのですね！嬉しいです😊本当に最後まで読んで頂きありがとうございました！ (2022年6月20日 12時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Omiso
| 作成日時：2022年6月3日 17時
