36話・取り憑かれた幻想 ページ36
________数年後。
彼女という煩わしい存在を消したおかげで心の中でつっかえていたものが外れてより従順に人の命を手にかけて屍の山を築き上げた。
順調だ。仕事も人生も何もかも。
機嫌よくアジトにある自身の部屋に戻ってドアを開けた。だが、中にいたある人影に一気に高揚していた気持ちが冷める感覚。
「勝手に部屋に入ってんじゃねぇーよ。九井。テメェ、何度言ったら分かんだよ!」
「…」
黒髪だった髪は真っ白の長髪に戻っている。本人曰く彼女が黒髪を望んでいたからそうしていただけだというが。
もう死んだから戻したとでもいうのか。なんだよ、オレに対する嫌がらせか?まぁ、別にどうでもいい。
「おい、いつまでオレのもん見てるつもりだ。不愉快だ。失せろ」
九井の前にあるのは俺の大切なもの。
腐らせないよう冷凍してその周りには花を添えて保存している少女の死体。眠っているように綺麗なまま。
その傍らで俺の声なんて聞こえていないかのように九井は崩れ落ちて泣き続ける。
いつものことだ。鬱陶しくて何度か蹴り飛ばして追い出してもコイツは何度も何度も彼女の元に足を運んでは涙をこぼす。
気味が悪い上にめんどくさくなって追い出すことには諦めた。
プルルルルルル!!!
タイミングがいいのか悪いのか携帯から電話がかかって出てみれば死体処理を願いだ。机にある薬を口に入れて冷めた心も高揚して気持ちよくなる。
オレはここのところ本当調子がいいんだ。
「ハハッ!しゃ!スクラップしにいくかァー!!!」
癖になった鼻歌を口ずさみ再度部屋を出ようとする。
「なぁ」
突然、呼び掛けられた声に思わず振り向けば九井が焦点が合わない目でこちらを見つめ
「Aはいつ雪にしてやるんだ?」
「…ハ?雪?」
「いや、いい。なんでもない」
そう告げてまた彼女の方に視線を戻して死体に縋り付いていた。もうアイツは使い物にならない。Aを失ってからというもの抜け殻だ。
マイキーに報告しとかねぇーと。
「また死体が増えちまうな」
バタンと扉を閉めて弾む足で仕事場へと向かった。
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Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時