検索窓
今日:3 hit、昨日:9 hit、合計:51,270 hit

21話 ページ21

「お嬢はピエロが苦手なんですか?」


その質問に対して肩を揺らすと「やっぱり」と呟いてスッと私の前にしゃがんで目線を合わせられる。


「あの怯えようは尋常じゃないと思ったんです。無理に話せとは言いいません。何があったか教えてくれませんか?少しだけでもいい。お嬢のこともっと知りたいんです」


「大丈夫」とそっと安心させるよう頭を撫でられて、その感覚が不意にココと重なった。

安心する温もりと心の整理がつかないのもあってかポツリポツリと過去を話し始める自分がいた。


「実は幼少期に…ピエロの仮面をつけた男に両親を殺されて」

「!…へぇ」

「幼かったから記憶が曖昧だけど…ただそれからどうしようもなくピエロが苦手で」

「そのピエロの髪はどんな色でしたか?」


なぜその質問をしてくるのかさっぱり分からなかったけど「ピンク」と答えれば、手を掴まれて春ちゃんの髪に触れさせられる。


「こんな風なピンク髪だったんですか」


ジッと目を合わせ続けてくる彼に思わず顔を背けた。なんでそんなことを言い出すんだ。

掴まれた手も振り解いて、髪から話を逸らしその先の経緯を話していった。


「…それで、両親も殺されて私も殺されかけたけど、気まぐれかそのまま殺されずに済んだの。私、その男を撃ったのに。その時にね、口元に傷があったのだけはちゃんと覚えてる。本当に恐ろしかった」


こんなに自分の過去について話したのは春ちゃんが初めてだ。どんな反応をされたかっておかしくない。

恐る恐る春ちゃんの方を見てみると予想していた同情した表情でも戸惑いの表情でもない。


ただ満足げに頷いては、嬉しそうに目を細めていた。


「お嬢のこと知れて嬉しいです。それに確かめたいことも済んだので帰りましょう」

「え…あ…うん」


思わぬ反応に戸惑い、確かめたいことが何を指しているのか結局分からなくて困惑する私の気持ちを置いてけぼりにして春ちゃんは私の手を取って歩き出す。


「〜♪」


ご機嫌よく口ずさまれる鼻歌。聞いたことあるはずがないのに、妙な懐かしさを覚えた。

22話→←20話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (144 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
209人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。