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19話 ページ19

連れてこられた遊園地は活気で賑わっていた。

遊園地なんていつぶりだろう。そもそも行ったとしても幼少期に両親と一回ぐらいだ。あまり覚えてない。


「なんで遊園地を選んだの?他に行く場所もあったのに」

「単なる思いつきですよ。それに少し確かめたいことがあって」


確かめたいこと?と首を傾げると「気にしなくていい」と告げられる。


「こんな大勢の中ではぐれると大変ですから、手を」


そう言って伸びてきた手。言葉に甘えて繋げば嬉しそうに笑ってくれる。私もつられて笑顔になる。

初対面の時は怖かったけどこんな優しい人なら警戒する必要なんてなかった。過去のピエロ男と重ねてしまったのが申し訳ないぐらい。髪の色がたまたま一緒なだけだ。


「そういえば名前聞いてなかった。名前教えて!」

「三途春千夜。好きなように呼んでいいですよ。お嬢なら」


お嬢って堅気の娘みたいな呼び方初めてされちゃった。だけど、悪い気はしない。


「じゃあ、春ちゃんって呼ぶね!ほら、いこ!」


大きな手を引っ張った。それから春ちゃんは何でも付き合ってくれた。アトラクションから開催されていたカーニバルまで。その度に無理に付き合わせてないかと聞いてみるけれど、


「お嬢の楽しそうな顔を見れるだけで嬉しいですよ」

「ウッ」


思わず心臓を押さえる。サラリとかっこいいことを言ってのける春ちゃんは本当に優しくて絶対…モテると思う。


「そうやって女の人いっぱい落としてきたんでしょ!」


冗談を交えて言ってみればクスクスと笑いだして


「そんなことないです。お嬢ぐらいですよ。女性にこんなに優しく接したのは」


腰を折って屈んできたかと思えば頬にマスク越しで軽く口づけをされた。


「ッ!?ちょ、こんなところで何やってるの!」


周りがジロジロと見てくる。慌てて春ちゃんを押しかえす。


「周りの目なんて気にしなくても軽いスキンシップですよ」

「私は気にするし、軽いスキンシップでもないし!」

「そう怒らないで下さいよ。お嬢。ほら笑って」


突然、肩に腕を回されてグッと寄せられる。前を見れば春ちゃんの手にはスマホがあり画面には私たちが映っていた。


「え、写真撮るの!?そんな急に」

「記念に撮っておきましょうよ。はい、チーズ」


慌ててポーズをしてパシャリと撮られた写真。

そこには、ニカリと笑顔を浮かべながらピースサインする私とそんな私を見て笑っている春ちゃんの姿があった。

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Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時

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