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16話 ページ16

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ガチャリと開いた扉に駆け寄るとココが何か考え込んでいた。

名前を呼べばハッとして私を見る。何かに聞きたそうに口を開け閉じするものの、ふわりと優しく抱きしめられた。


「今日からここがお前の居場所になる。これからは何があっても外に出ないでくれ」


ココの様子が何処かおかしいけど抱きしめられる温もりに甘えて「うん」と返事をして頷いた。するとホッとしたように息を吐き


「Aの仕事部屋、用意しといたから案内してやるよ」

「え!用意してくれたの!?」


今までネットカフェで仕事をやっていたから個人の仕事部屋があるなんて嬉しい。「やったぁ!」とはしゃいでいたらココがブハッと吹き出して笑いをこぼす。


「あ!今、ガキだなぁーとか思ったでしょ!」

「俺からしたらまだお前はガキだ」

「ガキじゃないし!」

「そう言ってるうちはガキなんだよ。睨むなって」

「ほんと何歳だと思って…」


会話をしながら廊下を歩いている時だった。ある写真立てが目に止まる。思わず手を伸ばして触れようとしたとき、ガシリとその手を掴まれた。

パッとそちらを見上げれば先程の笑顔はないココの怒った表情。


「それには触んな」


ギリッと強く掴まれる手がとても痛くて思わず言葉にすれば慌てて離される。


「ッ!悪かった。怖がらせるつもりはなかった」

「ううん…私の方こそ…その、ごめん。えっと…この女の人は誰なの?」


あらためて写真の方に目を移す。制服を着て綺麗な顔で笑っている。私と同じぐらいだろうか。

すると、ココはその写真を愛おしそうに、尚且つ悲しそうに見つめて


「俺が守れなかった人」


そう震えた声でぽつりと呟いた。

それはどう意味を指すのかは何となく察する。居心地が悪くなり写真から目を逸らすとココとバチリと視線が合う。

すると優しく微笑むココはそっと私の頬に手を添えて


「大丈夫。次こそは守ってみせるから。こんな腐った社会で大切だと思えたお前を。絶対に」


守る…って少し大袈裟すぎるんじゃないかと思ったけれど、大切だと言ってくれるのなら素直に喜ぶべきだ。生涯孤独だった私をココがこうやって歩み寄ってきてくれてるのは嬉しいことだし!


「えへへ。それはとても光栄です!」

「だろ?」


そう互いに笑い合っているこの時間は楽しかった。前よりもっとココとの距離を縮められていることが嬉しくて。だけど…


この日からココは私を外へ出してくれなくなった。

17話→←15話・気色悪く取り繕った笑顔



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Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時

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