5話 ページ6
チャンピオンとは、
ガラル地方の代表としての顔を持ち、全てのトレーナーに夢を与え、希望の光を照らし堂々と皆の前に立つ存在。
数々のスポンサーが刻まれたマントを羽織り、長い髪を靡かせ、圧倒的力で挑戦者をねじ伏せ、今日もまたバトルゲームの頂点に君臨する。
そうやって人々の脳裏には叩き込まれている。いいや、そうでなければならないのだ。
「新チャンピオン!若き少女ながら大人顔負けのバトル!その秘訣を教えて下さい!」
「新チャンピオン!カリスマ的ダンデ選手に勝ったご感想をお願いします!」
「新チャンピオン!我が社のPR案件お受けいただけますでしょうか?前回チャンピオンにもお受けいただいたのでぜひ!」
新チャンピオン!新チャンピオン!新チャンピオン!
何度も呼ばれるチャンピオンの名前、取材、スポンサーとの取引、メディア発信。
ダンデさんの手を取ってから"約一ヶ月"経つが、全くもって慣れやしない。
そもそも「新チャンピオン」は私の名前なのだろうか。いいや、私は…ッ…
「Aくん」
そう、それが私の名前なはずだ。
呼ばれた方へ顔を上げれば赤いタキシードを身に纏った委員長としてのダンデさんの姿。
「疲れただろう。休憩しようか」
「少し失礼」と放った彼の一言に私を取り囲んでいた人たちはあっという間に散っていく。
私の時はそんなことなかったというのにやはりダンデさんには威厳があるからだろうか。
休憩室に連れられてパタリとしまったドアと同時にその場に座り込んだ。
「Aくん、大丈夫か!?」
慌てて膝をついて私と同じ目線に合わせるダンデさん。だけど、それを遮るように膝を抱えて蹲る。
「私…ッ…こんな調子でやっていけるでしょうか」
自信がなかった。
先程の周りの反応で分かるように私利私欲の格好の的になっている。それに…前回のチャンピオン。ダンデさんとあからさまに比べられているのが身に沁みる。
こうやって、弱音を吐くのは早すぎるかもしれない。
だけど慣れないものは慣れない。重圧が苦しい。したいことじゃない。投げ出したい。何で私がこんなこと。
自由に冒険していたあの頃と違う。違いすぎるんだ。
「チャンピオンとしてやっていけるかどうか不安なのかい?」
「…」
「やっていけるいけないの問題じゃないんだ。やってのけなければならない。そう何度も教えただろ?」
その言葉にバッと顔を上げる。今の私の顔は悲痛で歪んでいた。
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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時