29話 ページ30
パーティー会場を後にして、彼女を抱えながら屋上に待機させた空飛ぶタクシーでバトルタワーへ向かう。
腕の中で眠るAくん。
ずっとオレにとっての特別な人。君との勝負が特別なのが何よりの証拠だ。そんな君の隣にいるべきなのは元王者のオレだけだ。
それを分かってくれず他を望むなら手段を選ばない。
もう何もかも吹っ切れたんだ。
バトルタワーに着き最上階へエレベーターで昇る。チン!という音に開いた先は横に伸びる清掃された廊下。
しかし、この階に部屋は二つしかない。一つはだだっ広いバトルステージ。もう一つは今から向かう部屋。
その部屋の扉を開けば委員長としての自身の部屋。よくここでAくんと会話したものだ。それはこれからも。
部屋の奥へと進めば、実はもう一つ扉がある。
そこを開けば小さな物置部屋となっている。その空間には立派な王座が真ん中に置いてある。いつしかチャンピオンのときに貰ったものだ。
腕に抱えていた彼女をそっと座らせた。
「ッあぁ…とてもキミにふさわしいな」
電気もない薄暗い部屋だというのに唯一小さな窓から差し込む夜空の星に反射した光だけで王座に座る君は輝きを放つ。
チャンピオン。いつかその椅子は君にプレゼントしようと思っていたんだ。さらにオレがチャンピオン時に着ていたマントを彼女に羽織らせれば…完璧だ。
ずっと眺められるほど美しい光景に恍惚とする。
「オレはずっとチャンピオンとしての君を支えるよ」
忠誠を誓うように膝を床につけてダランと落ちる彼女の手の甲に口づけを落とす。そして…手首と手すりが繋がるようにガチャリと拘束具をつけた。
「すまない。Aくん。望む答えを言うまで出してあげられそうにない」
君がチャンピオンとしてここで生き続ける…そういうまでオレの手の中に閉じ込めてしまおう______
パリィィン!!!
突如、何処からかガラスが割れた音がした。オレの部屋じゃない。音の遠さから…バトルステージの方か。
「…」
見当はついている。どうやら邪魔な来客を相手にしないといけないらしい。
名残惜しい気持ちを抑えながらも彼女から離れる。
「待っていてくれ。Aくん。すぐに帰ってくる」
君が目覚めた頃には片付いている。わざわざここまで来たであろう邪魔な来客…
王子様気取りのドラゴンをオレが捩じ伏せてやろう。
「行ってくるよ」
ギィーッと引かれたドアは最後、バタンと音を立てて完全に閉まった。
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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時