16話 ページ17
バトルタワーを飛び出してシュートシティの街中を走る。
案の定、街行く人が「チャンピオン!?」と視線を向けてくる。注目の的になるのは避けろと散々言われてきたがこの際どうでもよかった。
今すぐに誰もいない土地へ。一人でいられる所へ。
「アーマーガア!」
私の手持ちのポケモン。ボールから出せば心情を分かっているように私を背に乗せて大空へ舞い上がった。
心配そうにこちらを見つめるアーマーガアの頭を撫でる。
「大丈夫。このままワイルドエリアへ連れてってくれる?」
そう伝えれば、ひと鳴きして飛行する速度を加速させ草原が広がる方へと向かった。
________
ワイルドエリアの景色を一望できる場所。そこにそびえ立つ一本の大きな木の下へと降り立つ。ここは、息詰まった時によく来る場所だ。
「ありがとう」と告げてアーマーガアをボールにしまう。
空を見上げれば雲行きが怪しかったが気にしなかった。木にもたれかかり腰を下ろして膝を抱えて蹲る。
今回ばかりは…いや、成人するからこそ許して欲しかった。プライベートの一つや二つぐらいの自由を。
もううんざりだ。何もかも。
大人と認知してくれたと思えば、次は女だからって縛られなければならないのか。
ダンデさんが嫌いなわけではない。むしろ尊敬しているし、ここまで支えてくれた恩人でもある。だからこそ、そんな貴方に認めてほしかったのだ。
私は一人でやっていけると。
願わくばチャンピオンという座から解放してほしい。敷かれるレールの上を歩くのは我慢出来ないんだ。
でも、こうして拗ねて飛び出したってダンデさんは連れ戻してくる。逃げられない。どうしようもない。
ポツリと鼻先に当たる雫。
次第に周りにも落ち始めてザァーと空から激しく降り始めた。木の葉の隙間から落ちてくる雫は妙に冷たく、反して目元から頬に流れるものは生暖かい。
こうやって惨めに一人で泣いたって、こんな所いる私を見つけてくれる人は誰もいない。
そう思っていた。思っていたというのに_____
「コータス!ひでりだ!!!」
その声と共に暗い雨雲は吹き飛んで空は澄み渡り太陽の光が包み込んだ。そして、バサリと聞こえた羽音は私の前に降り立って頭上から影が差す。
「そんな所にいると濡れるぞ…ってもう雨は止んだか。なぁ、A。顔あげろよ。空が綺麗だぜ」
暗闇から上げた視界には、青空を背景に優しく微笑みこちらに手を差し伸べるキバナさんの姿があった。
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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時