34話 ページ34
日は暮れ、窓の景色は真っ暗な夜に変わっていた。
緩やかな風がカーテンを揺らし、その動きを眺める。
弔に見捨てられて半月は経った。
本当に彼はあの場で私を見捨てたのだろう。
「(お前はもうここで終わりだ)」
そう言いながらもきっと迎えに来てくれると信じていた当初が懐かしい。
今でも彼のことは忘れられない。
好きだとかそんな感情はないけれど長年側にいてくれたのは彼以外にいない。
「弔、会いたいな」
なんて思う私は間違っているだろうか。
窓を閉めて、布団を被って横になりそのまま目を瞑る。
夜になったら考えてしまう彼のこと。全てを忘れて寝てしまおう。
スッと息を吸い込んだその時だった。
パリィィーーーーン！！！！！
勢いよく窓が割れる音が部屋に響き渡った。
ハッと起き上がると周りは青い炎で包まれていて、外からは騒ぎを嗅ぎつけたヒーローの声。
そんな混沌の最中、ジャリと割れた窓を踏み、私に手を差し伸べるのは…
「A、迎えに来た」
弔でもショートでもない。
蒼い瞳でただ私を見つめる荼毘の姿があった。
「荼毘？！なんでここに…」
問いかける前にフワリと浮く体。
そのまま抱き抱えられて、荼毘が窓に足をかけるが
突如、青い炎を割って大きな氷結が部屋を凍らし、こちらに手を伸ばすショートの姿。
「〜ッA！行くな！！」
私が手を伸ばせば届く距離。
思わず手を伸ばそうとするけれど…
「…」
荼毘はそれを阻止することなくただ黙って見ていた。
「…ごめんなさい」
そっと一度伸ばした手を下ろし、荼毘の服をギュッと掴む。
それを合図に荼毘は窓を蹴って、外へと飛び出した。
後ろで私の名前を叫ぶショート声を聞き流して…
〜〜
夜中で辺りは真っ暗の中、私を抱えたまま走る荼毘。
「よかったのか？アイツの手を取らなくて」
ふいに私の顔を見ることなく前を向いたままそう聞かれた。
「いいの。元々私はあっち側の人間じゃない。それに…」
「それになんだよ」
「貴方に何故私がショートのほうに手を伸ばそうとしたのに止めなかったのも聞きたかったから」
そう告げると、ゆっくりと立ち止まる荼毘。
「…んだよそれ。俺のためだっていうのかよ」
月の光が当たり、荼毘の横顔が見える。
一目で見ても分かるぐらい辛そうに顔を歪めていて…
「俺のことなんて眼中にないくせにな」
そう言ってふとこちらを見る彼は、静かに頬を濡らし泣いていた。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» わわ、緑の白猫様！今作でもコメントありがとうございます！ヒロアカの小説まで読んでいただけて感激です😭かなり納得した終わり方を書けたつもりなので貴方様からの最高の褒め言葉をいただけてとても嬉しく思います！本当にありがとうございました！ (2022年2月7日 0時) (
レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - はっぴーえんどだ……。私が知っている作者様の中の作品で初めてみたはっぴーえんどだ……! 主人公が初めからちょっと可笑しいのがまた新しく感じ、最終的にヒーロー側につくとはまた違う、正しくはないかもしれないが幸せな道を選んだのが最高でした! (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - あゆりさん» コメントありがとうございます！1番好きだなんて…最高の褒め言葉です！死柄木くんの沼によりハマってしまいましたか。よっし、この調子だ()本当にこの作品を読んでくださりありがとうございました！今後とも応援よろしくお願いします！ (2020年5月16日 12時) (レス) id: 47426ab442 (このIDを非表示/違反報告)
あゆり(プロフ) - 今まで読んできた作品の中で1番好きです！！Omisoさんのおかげで、もっと死柄木くんの沼にハマりました()これからも応援しています！ (2020年5月16日 11時) (レス) id: ce98ce751c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます！！本当に嬉しすぎるお言葉に喜びで胸がいっぱいです！また貴方様を楽しませる作品を作れたらいいなと思います！！今後とも応援の方よろしくお願いします！！ (2020年4月3日 7時) (レス) id: 47426ab442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Omiso
| 作成日時：2020年2月10日 22時
