水面に浮かべた。(2)

伏線 ページ8

急に話しかけられて、感情の持ち方が分からなくなった。



前まで普通に話せたのに、口から出す一語一句に神経を使う。



なんて言っていいか分からへんけど…やっぱり嬉しい。



冷たい秋夜の風が、熱くなった頬を撫でて心地が良い。



隣を歩く九条さんが手を突っ込んだポケットから、ジャラジャラと鍵が擦れる音がする。



店の扉を開けると、暖かい空気が歓迎した。



いつもの和食店。



店の雰囲気も味も、とても好き。



行きつけにしたいところやけど、ここは九条さんとしか来うへんって、何となく決めてる。



いつもと同じ料理と、カシスソーダを頼んだ。



まともに見れへんし、口も開けへん。



思わず頬杖をついて天井を仰いだ。



九条「…今日さ、言いたいことあって誘ってん。」



『…なんですか？？』



九「いや、気が向いたら言うねんけど…言いたいことあるよってことだけ伝えとくわ笑」



『なんですかそれ…！笑』



今の私にとっては、笑顔が引きつってなければそれで充分やった。



届いたカシスソーダに、口をつける。



体全体がじんわり逆上せるような、不思議な感じがする。



今日こそは迷惑かけへんようにと、この炭酸に願いを込めた。

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