#62 ページ20
『まぁでも部活始まる時間は登校時間より遅いから軽く寝坊しても大丈夫だからいいか』
「ズル。吹部なんて運動部並に部活ある日多いし練習時間も長いんだぞ。午後まで続く日だってあるんだからな。吹部じゃなくて園芸部とかそういう部活に入ればよかった・・・」
『今更顧問に部活辞めますなんて言えないでしょ』
「多分“お前はもう少しで引退なんだから最後まで頑張れ”なんて言われるだろうな」
『頑張れ』
「はぁ・・・」
吹奏楽部って意外とハードなんだなぁと彼の愚痴を聞きながら辺りを見回すと、もう既に山桃や梅がチラチラ咲いていた。
桜はまだ蕾の段階だろう。
ここら辺の桜の満開予想は4月中旬頃。
『梅とか山桃もう咲いてる』
「春だな」
『あ、土筆』
「そういえば土筆って食べれるんでしょ？」
『処理が面倒だけどね。今度土筆の佃煮おすそ分けするよ。要らないならいいけど』
「土筆なんて食べる機会そうそう無いから有難く貰うわ」
『でしょ？貴重な経験ができるよ』
「土筆自体は貴重では無いがな」
『でも食べた事無いんじゃない？』
「まぁそうだが・・・」
私は道端に無造作に生えている土筆を何本か摘み取って、佃煮にして食べようかな、それとも卵とじかな、いや炒って食べる？
やっぱり全部美味しいから全部にしよう、と調理方法を考える。
でも土筆ってアク抜き面倒だし何よりアク抜きしている内に爪の中にアクが入っていくので凄くだるい。
あと匂いがあまり好むような匂いでは無い。
美味しければなんでもいいけどね。
『よし、これくらいでいいか』
「そんな使う？」
私が摘み取った土筆は、私が腕で抱える程の量に達するものだった。
彼はそんな私を見て軽く引いている。
そんなに引くレベルなのか？
『佃煮以外にも卵とじ食べたいから。意外と土筆って色々な料理に使えるし』
「別に駄目とは言ってないけど持って帰るのに袋とか無いのかよ・・・量以前に土付いてるから制服汚れるぞ」
『袋なんてある訳無いじゃない。制服は洗えば問題ないでしょ』
「それでいいのか・・・」
『今更汚れるだの何だの気にする余裕は無いって』
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作者名：七瀬紫苑(レイピアさん。) | 作成日時：2021年2月14日 21時
