まっしろなあい ページ2
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『なんで来たの、すまいる。』
「…別に来ちゃいけないなんて言われてないからな。」
側から見たら睨みにもならないだろう視線を送りながらそう言えば、飄々と返す彼。
そう言う掴めないところ、怖いからいや、といえば少しと言うか、だいぶ眉間に皺を寄せて嫌な顔をする。
「はぁ?…俺の掴みどころとか別に要らねえだろ。掴むな。」
『…意地悪だぁ、心折れちゃった。』
中身のないお話。まだ、いつもよりかはマシだった。
『で、結局はなんのために来たわけなの。』
「飯だから呼んでこいってきんときが。」
そう言ってポケットから鍵を取り出して、首元と足の鎖についた錠前を取るスマイル。
邪魔な重たいものが外れて体が軽くなる。
このまま、飛べないかなとか、ぼんやり考えていた。
しかし、ぎゅう、とキツく握られた腕の痛みで戻される。
「おい、行くぞ。」
なんて、私の腕を掴んだまま、リビングへと連れて行かれる。
後ろからちゃりちゃりと首輪の鈴を鳴らして、すまいぬもついてくるのがわかった。
そのまま、リビングのドアをさっさとスマイルが開けた瞬間だった。
誰かが飛び出してきて、私にぎゅー!!っと抱きついてきた。
大方、ぶるーくだろうと思いながら背中に片腕を回す。
もう片腕を掴んでいたスマイルは、「おい、離れろぶるーく。」
と少し不貞腐れていたような声で注意している。
あ、結局ぶるーくなんだ。なんて場にそぐわないことを考えてたけど、
あまりにもずっと抱きしめてくるようで、だんだん息苦しくなってくる。
あ、これもいいなって。
私を愛してくれる人の腕の中で、朽ちるのならいいなって。
我慢して抱擁を受け入れていた。
でもそんなのうまくいくはずなくて。
「おいぶるーく、Aが苦しそうだろ!」
という少し甲高いなかむの声が響いて、ハッとしたのか私の背中に回されていた腕を離した。
『はっ、ぁ…ひゅ、』
急に酸素が来るものだから、上手く肺が空気を受け付けてくれない。
拒否する体に酸素が入り込んできて、呼吸がおかしくなる。
あ、このまま倒れてしまうのもありだななんて。
どこまでも私は自分勝手だ。
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天薫茈雅(プロフ) - ほうき星さん» コメントありがとうございます!ご丁寧な選び抜かれたお言葉での賛美、ありがとうございます。当方あまり文字を綴るのが得意では無いため、そう言っていただけますととても嬉しいです。更新は遅くマイペースですがお付き合い頂けますと幸いです。 (4月11日 0時) (レス) id: c24003a2ad (このIDを非表示/違反報告)
ほうき星(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。小説の世界観が本当に好きで作者様の選ぶ言葉の1つ1つが本当に丁寧で主人公の心の苦しさとかキャラクターの愛の深さに感動しました。 (4月10日 15時) (レス) id: 43360d69cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あめ | 作成日時:2024年1月21日 20時