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そんなことはどうでもいい。
彼女はこの戦いをやめさせたいようだが、そう簡単にはいかないだろう。
だって理事長って地位の人間が、剣城達の入学を、その理由を知らないはずがない。
それだけ大きな話になったんだよ、サッカーって。
｢いいえ、この勝負 認めます｣
ほら、やっぱりね。
｢近いうちにサッカー部も改革が必要だと感じていました。新入生1人に負けてしまう部など、存在価値はありません｣
理事長とやらのお言葉に、思わず吹き出す。
ウケる、見放されてんじゃんサッカー部。
理事長の言葉のせいで、さらに重圧がかかったであろう松風。
可哀想に、でも庇ってあげられないんだ。これでも敵なんだよね、一応。
｢そこの君は……何と言ったかな？｣
｢松風天馬です｣
｢松風くん、サッカー部の運命は君にかかっている。君に任せた｣
｢え？｣
｢頼んだよ｣
｢えぇ！？｣
殆ど理事長の独断と偏見で決定したサッカー部の運命。
勿論そんなのに納得が行かない人だっているよね。
｢ちょっと待ってください！本気で言ってるんですか！？
冬海校長からも辞めるように言ってください！！｣
声を上げたのは青い……いや、面倒臭いなこの呼び方。名前知ってるし音無先生って呼ぼ。
音無先生はぽっと出の松風に全てを委ねたくないらしい。
冬海校長と呼ばれたおじさんは動揺して、理事長の耳に顔を近づける。
ここからじゃよく聞こえないが、作戦会議ってやつだろう。
校長のくせに自分の意見ひとつも言えないのか、弱いな。
数言交わしてから顔を上げた校長の代わりに、理事長が辞める気は無いと主張する。
｢理事長……｣
ここまで静かに話を聞いていた剣城が、改めて松風に話しかける。
｢じゃあ決まりだな？｣
｢……大丈夫？天馬くん｣
｢……ドリブルの1人練習とかなら、毎日やってますし……い、いけますよ！｣
いやそれだけ？
……え、それだけですか？ふぅん。えっ絶対勝てないじゃん。
そう思ったのはあたしだけじゃないらしい。
｢ドリブルの1人練習って……それだけ？｣
音無先生が頭にかけていた眼鏡がずり落ちる。
松風は何も間違っていないというように頷く。
ドリブルの練習しかしてこなかった。しかも1人練習。
終わったなぁ、と全体的に察した空気が流れ始めた頃、松風は緊張した面持ちで宣言した。
｢大丈夫、なんとかなります｣
……さて、なんとかなるといいけど……
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