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＊
｢……！｣
ゴミ箱の方向を呆然と見つめる松風。
その瞳は揺れていた。
｢君……！サッカーを侮辱する気！？｣
｢侮辱？熱くなんなよ、センセー｣
｢何ですって……？｣
教師にも怯まずへらりと煽った剣城に流石と感心していると、静かに怒る声が聞こえた。
｢……待てよ｣
｢ア？｣
｢サッカーは……サッカーはくだらなくなんかない。
くだらなくなんかないし、必要だ！｣
……！
松風の言葉に、今度はあたしが目を見開く。
松風がどれだけサッカーが得意なのかは知らないけど、どうやら相当好きらしい。
……上手そうには見えないけど、大丈夫そ……？
｢！い、いや、あの、えっと……｣
｢誰だお前｣
｢……お、俺は松風天馬、今日からサッカー部に入るんだ｣
剣城が怖いのか動揺してるだけなのか、どもりながら自己紹介をする。
勇気出して自己紹介したのになんかごめん、カンニングみたいに先に名前知ってて。悪気は無かった。
｢ハハ、残念だったなぁ……たった今無くなった｣
｢まぁ、別の部活とかしてみても楽しいかもね？｣
サッカーに囚われずに何でもかんでもやってみた方がいいよ……っていうのは先輩(笑)からのアドバイス。
これでも長年サッカーのいざこざ見てきてるからね、あたし。
10年前とは違うもんなぁ……いや、これは関係ないか。
まあ案の定、ほぼ初対面のあたしの言葉なんかじゃ揺らがないのか松風はサッカーがしたいと主張した。
｢そんな……俺、サッカーをやるためにここに来たんだ！
サッカー部が無くなるなんて困るよ！｣
｢困る？そうか……相当サッカーに自信があるようだな。
なら見せてくれよ、お前のサッカーを｣
｢え……？……！｣
なんの前触れもなく剣城が蹴ったボールは見事に松風の腹に当たる。
ただの蹴りでも強いもんは強い。止められなかった松風はそのまま地面に倒れ込んだ。
｢天馬くん大丈夫！？なんてことをするの！！｣
そんな松風に真っ先に駆け寄る青髪の教師。
｢ムカつくんだよなぁ、お前みたいなサッカーをろくに知りもしない奴が語るのが｣
｢知ってるさ……俺だってサッカーを知ってる｣
もう痛みは引いたのだろうか、剣城が蹴ったボールを持って立ち上がる松風。
｢ほう？じゃあその実力、見せて貰おうか｣
｢え……｣
剣城の提案に、この場に緊張が走ったのが分かった。
あーあ、今のボールを避けることすら出来ないのに期待しない方がいいと思うけどな。
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