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俺に向けられたそのシュートは、風の勢いはあったものの 威力は剣城のものに比べれば大したことはなかった。
条件反射で声を上げてしまったが、痛みはそんなに無くて……。
化身のことはよく分からないけど、きっと化身を出したAは強い。
俺はそれを身をもって知ったんだ。
……それなのに、どうしてこんなシュートを撃ったんだ？
周りを見ても、先輩達は驚いた顔でボールを目で追っているだけ。
この不思議なシュートに気づいたのは俺だけかもしれない。
“京介のチーム強いけど……私は応援してますから！”
ふと思い出したのは、グラウンドでの彼女の言葉。
Aのことはまだよく知らないけど、なんとなくその言葉に嘘はないように感じた。
……もしかして、Aは俺と同じでこれ以上サッカー部の先輩達に被害が及ばないようにしようとしているとか？
よく考えてみれば、これまでAは敵っぽい発言をしてきたけど、1度も先輩達に危害を加えていない。
点はとってたけど、Aがボールを持っている間は 先輩達の叫び声を聞くことはなかった気がする。
それどころか、化身を出そうとした時に少し躊躇っていた。
なんて、思い過ぎかもしれないけれど。
俺一人じゃ絶対に太刀打ち出来ない状況で、藁にもすがる思いだけど……信じてみよう。
敵チームではあるけど、きっとAは俺の味方だ。
この試合で俺とAがやり取りを続ければ、これ以上他の人に被害は行かないんだ。
それならやってやる！
｢っ、｣
｢……？｣
ボールを追うように飛んだAがシュートの体勢になった瞬間、ほんの一瞬だけバランスを崩した。
近くに居た俺は見逃さなかった。
彼女の、痛みに耐えるような表情を。
｢うわああぁっ！！｣
その直後に俺に当たったボールはさっきの比じゃないくらい威力が強くて、痛くて。
でも申し訳なさそうなAを見たら、このボールは何かの間違いだって思えた。
｢最後までやり抜けば、きっと道は見えてくる！｣
俺は大丈夫だから、試合が終わるまで頑張ろう。
そんな気持ちを込めて ボールを足元に戻したAを見据えた。
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