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剣城からなんとかボールを奪えて、あれから。
俺は俺を置いてけぼりにしてどんどん進んでいく会話に追いつけてるような、追いつけてないような感覚だった。
そういえば、剣城の隣にいた子……なんとなく見覚えがあるような……
見覚えっていうか、ちょっと前に見たような気がする。
｢あ、いたいたっ！松風くん！あと雷門イレブンの皆さーん！｣
どこかぴりぴりした空気の中、そんな元気な声が近づいてくるのが聞こえた。
前を見てみると……そこには笑顔で駆け寄ってくる鏡塚さんが居た。
こんな空気の中、それを気にせずに来られるって凄いなぁ……なんて感心したり。
｢えっと、あ、私鏡塚Aって言うんですけどっ！｣
｢鏡塚……俺達に何の用だ｣
俺の近くまで走ってきた鏡塚さんは、小さく頭を下げながら自己紹介をする。
それから俺の方を向いて微笑んだ。
先輩に投げかけられた質問に答えずに暫く雷門イレブンのことをじっと見ていた鏡塚さん。
それからはっとしたように、再び笑顔を作ってみせた。
｢あ、いえっ！ただの応援です！
京介のチーム強いけど……私は応援してますから！｣
それだけ伝えて満足したのか、今度は俺の方を向いてきた。
きらきらした瞳で見られ……ガン見されてるの方が正しいかもしれない。
｢松風くん！さっき見てたよ〜！
凄いね、あんな強いシュート止めちゃうなんて！｣
｢あ、ありがとう！｣
どもりながら感謝を告げると、嬉しそうに笑っていた。
話にひと段落ついたのを察して 質問をしようと顔を上げる。
｢そういえば鏡塚さんって……｣
｢あ、鏡塚って言いにくいでしょ？Aでいいよ〜｣
｢あ、うん、じゃあ俺も天馬でいいよ｣
遮られたかと思えば、名前呼びを推奨されたので俺も名前でいいよ、と返しておく。
そういえば下の名前で呼ばれることが多いから、松風くんって呼ぶの珍しいよなぁ。
目の前の少女……Aは、どうやらいつの間にか居なくなった雷門イレブンに気づいたらしい。
｢やばっ！これ以上遅れたら怒られちゃう！｣
｢え？｣
｢先行ってるね、天馬！また向こうで会おう！！｣
そのまま走り出したAの姿はあっという間に見えなくなった。
そうだ、俺も行かないと。
先程音無先生に教えて貰ったサッカー棟に小走りで向かう。
……あれ、そういえばAは誰に怒られるんだ？
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