我が主は体を差し出した、ならば私は ページ6
昼下がり。
デスクの上で私は追憶をすることとした。
遡ればおよそ八年位は前だったか。修復の腕を買われ、私は技師から医師へと任命され、まだ間もない頃の事だっただろうか。
ツリーハウスの傍で、私は食器を作っていた。もちろん、誰かに使ってもらうためのもの。
鳥のさえずりや木々のざわめきに紛れて、小さな二つの足音が聞こえてきた。
何者だろうか。…いや、何者だろうと私は客人を迎え入れるのみなのだが。
そう思いながら、ツリーハウスから離れ、大樹から顔を出してみると、そこには顔のよく似た小さな双子が重たい体を引き摺って互いを支えながら歩いていた。
私でもよく見えるほどの殴打痕や負傷の跡。彼らが、
私は二人の勇気を称え、アグノマギアに彼らふたりを保護してもらうことを提案した。
そんな二人が、非戦闘員のリーダーとなり、少年隊の指導者となった。
二人で一つ。一人はすなわち二人ともに揃う事。
黒い髪が、やけに目に付いたのを私は覚えていた。
漆黒。濡れた鴉のような黒。光をも吸い込むような闇。彼らの髪は、そう形容できる黒さだった。
ユキトくんとカナトくん、だったかな。あの二人に振舞ったジンジャークッキーを、彼らはまだ覚えていただろうか。
くろちゃんの怪我が治ったら、また二人に彩り豊かなジンジャーマンを贈ってみよう。
あの二人が黒以外の色を忘れないように。
世界にはまだまだ沢山の色がある。
彼らがもし、黒以外の色を忘れてしまったなら、私は二人にまた神樹の鮮やかな緑碧の葉の押花の栞を送ってあげよう。
世界は、色があるから美しいのだ。
神が作り上げた、美しい色。
二人の少年に、今度はなにを見せてあげようかな。
窓から差し込む、夕焼けの緋色。
そうだ、今度はこの色を見せてあげればいいんだ。
追憶が終わる頃には、もう夕焼けが沈みかけていた。
時の経つ速さに多少驚くけれど、私は早速万年筆で二人に手紙をしたためた。
「今度、君達にまたお菓子を贈ってあげよう」
………彼らに届くと良いのだけれども、ね。
(東雲さん宅の雪音くんと叶音くんをお借りしてのお話でした。この派生作品のおっさん視点です)
我が主よ、どうか迷える子羊を→←異端は狩られる、魔女裁判という名目の元
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アトランティス(プロフ) - 初めまして、見させて頂いてます。ジャレットおじさま...?(混乱中)うちの子が出るなら甘い物を貰いに来そうだな...()更新楽しみに待ってます! (2019年7月28日 23時) (レス) id: a0fd450377 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - 十六夜月姫さん» 更新頑張って下さい!こちらもおじさまを借りるときがいつか来るので、そのときもよろしくお願いします!(予告) (2019年7月28日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 螺旋状さん» こちらこそありがとうございます…!おっさんはこれからもこうして悩みながらの生活をしますがよろしくお願いします…! (2019年7月26日 20時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - え、あ、え、うちの貴智くんが...?(混乱)お借りしたのを確認しました!おじさまカッコいいです(・−・ )。続きを楽しみにしています!使っていただきありがとうございました(*´▽`*) (2019年7月26日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜月姫 | 作成日時:2019年7月19日 21時