始まりの始まり2 ページ10
．
「すまない。見ての通り担任も適当だから大変だと思うが……」
「自分のクラスだと思ってくれて構わないよ」
雪染に向け軽く手を振ると、力を無くすようにソファーの背凭れに倒れこむ黄桜。
「ああ、それとね……この子」
こちらに指を差され、風宮は反応する。
「クラスは違うんだけど、目をかけてあげてくんないかな。このままだと、本当に引きこもりになりそうだからさ」
「……引きこもりじゃないし、余計なお世話です」
まさか、こんな事の為に自分は連れて来られたのかと黄桜と学園長を見る。しかしこの二人はあらかじめ話し合っていたようで、学園長も頷いた。
雪染は風宮を見つめ続けると、学園長の方に振り向き、自分の胸を叩く。
「はい！任せてくださ、い……うぇ！ゴホゴホッ」
強く叩きすぎたのか咳き込む。
大丈夫なのかこの先生で。と雪染から一瞬目を離した時にはすでに、出入口に移動していた。
「しづれいじまじたあ！」
バタン とドアが閉まる。
なにが起きたのかわからなかった。見た目に反して動ける人なのか。
だが、嵐のように去っていった副担任よりもこの二人には聞きたいことがある。ソファーから立ち上がり、学園長の前まで歩いていく。
「……どうして私なんかに構うんですか」
「なんか、本当にそう思ってるのかい？」
「……どういう意味ですか」
「ちょ、ちょっと仲良くしようよ、ね？」
具合が悪いわりに横から割って入ってくる黄桜を前に、眉を寄せる。いつだって彼は面倒くさい。必要以上に自分に絡んでくる事も、世話好きな所も。
学園長は絡めていた手を解き、机の引き出しから一枚の紙を取りだし、風宮に見せつけた。
それが自分の写真が載った調査資料のことに、僅かに目を見開く。
「君はもっと、自信を持った方がいい。その才能は素晴らしいものだから」
自分の腕を抱きしめると、黄桜が頭を撫でてきた。
「俺達としては、莉愛ちゃんを守りたいんだよ」
俺達としては、か。
すでに手遅れなのを二人は薄々気付いてるくせに。
あんな話を聞いて協力してくれなんて誘われてしまった以上、無関係を通せるものじゃない。
風宮は諦めたように長く息を吐くと、さりげなく黄桜の手を払って学園長に告げる。
「それは貴方達が決めることじゃない。彼がどうするかによって、私も動かざるえないことだから」
「………そうだな」
そっと祈るように、学園長は瞼を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ダンガンロンパ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
