砂糖菓子 ページ8
．
「りっちゃん、全然進んでないじゃん」
十六夜を膝枕させながら流流歌は顔を覗く。
言われていた約束の日。
特に待ち合わせをする場所を決めていなく適当に歩いていた所、ちょうど家庭科室でお菓子作りに励んでいた流流歌と、その近くで観察をしていた十六夜を見つける事が出来て今に当たる。
テーブルにはあの時言った言葉通り、たくさんのお菓子達が並べられていてどれも魅力的だったが、喉があまり通らなく眺めているだけだった。
「ねえ、どうかした？ただでさえブスッとしてんのに、今日は一段とブスーッとしてるよ？」
相変わらず小さな刺を含ませながら話すが、表情が無いに等しいその小さな変化に気付く事が出来たのは、付き添っている、表情を出すのが不器用である十六夜を普段からよく見ているからだろう。
流流歌の視線を流すように、金平糖を一つ取り、指の腹で転がす。
「……流流歌さんは、自分の才能を愛してる？」
「はあ？い、いきなりなに」
動揺する彼女に、風宮は金平糖を真っ直ぐと見続ける。
「……人って、自分に無いものを羨ましがったりするでしょ？」
「ま、まあ」
「そんな話」
ガリッ と金平糖を口に入れ噛み砕く。
突然過ぎて難しかっただろうか。「どんな話なの」と横で小言が聞こえるも、十六夜の頭を撫でながら彼女なりに考えているようだ。
「流流歌は、超高校級のお菓子職人の肩書きを貰えて誇りに思ってるよ。皆が流流歌のお菓子を食べて美味しいって言ってくれると、とても嬉しいし……だからこそ」
一瞬何かを思い出すように顔を歪むませる流流歌に、流し目を送る。
「だからこそ食べてくれない人がいると、否定されてるみたいでイヤなんだ。……流流歌はお菓子を作る事ぐらいしか才能がないから」
幼馴染みである、忌村静子の事を指しているのだろうか。
彼女は薬を服用していて、お菓子を食べると副作用が起きてしまうから食べれないと流流歌から聞いていたが、頑なに自分を貫く辺り、この人も才能に囚われている証に違いない。
俯く流流歌の顔に、十六夜がそっと触れた。
「俺はお前の良いところ知ってる。だから落ち込むな」
「……ううっ、よ、よいちゃ〜ん！」
ひしっ とお互い抱きしめる姿を見て、風宮は一人お菓子に目線を向ける。
「……そう。才能を持ったからって、その人が幸せとは限らないんだよ」
誰かに言い聞かせるわけでもない。
宛がわれていたフォークを手に、ケーキを刺した。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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