終わりの始まり ページ50
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忘れたらと言って、日向に対する未練を一番残していたのは風宮の方だった。
そうやって今まで生きて来て、誰かが報われたことも、側にいてくれた人も１人もいないのに。
……解ってるはず。これからも、この先も、ずっと独りだと言うことは。
狛枝に奪われた唇をなぞりながら、風宮は目を閉じる。
――無駄な感情を削ぎ落として、心の中に閉じ込めて、何十にも鎖で縛れば、ほら、いつもの私だ。
空港前に一台の黒のタクシーが止まる。
後部座席が開く。赤いネイルを施された手から白い財布を座席に放り投げられる。江ノ島盾子は車から出た。
「サンキュー。釣りはとっておいて」
「あ、ありがとうございます！」
ドアが閉まり、タクシーは発進していなくなった。
飛行機から上陸して来た客が構内から出てくるのを、ゆったりとした足取りで横切る。
白い兎と大きなリボンの髪留めをしたツインテール。赤のサングラスと派手な服装を身に纏う江ノ島には、カリスマモデルとしての気品が溢れている。
「ようやくね……」
遠くで爆発する音を聞いて、立ち止まる。
「うんふふふ」
騒ぎ出す客を背に、江ノ島はサングラスを片手で外す。
「さぁ！後編からはお待ちかねの江ノ島ターイムでいただきよぉ！」
うふふ と弧を深く描くように笑う。
――お前みたいな才能がない人間はな、何も考えずにだらだら毎日這いつくばって生きてんのが、何より幸せなんだよ。
真っ白な部屋に一つのベッドがある。
病衣を着た日向は脱力したように仰向けに寝たまま、虚ろな瞳で天井を見つめていた。
薬の投与で意識が混濁する中、走馬灯のように思い出されていく。
夕日の噴水前で、ゲーム機を持って嬉しそうに頷く七海。
『じゃあ、またな』
『うん、また明日』
考えながら さらり と平然に言ってのけた風宮。
『……私は本科の人より、日向くんと一緒にいた方がいいな』
『えっ』
真っ直ぐと見つめられた目。
『あれは自己責任だよ。日向くんのせいじゃない』
――七海、風宮、俺は……。
真っ白な部屋に、研究者が現れる。
「時間だ」
日向の前に近寄り、男は子守唄のように優しく、言い聞かせるように言った。
「なーに、大丈夫。起きた時は少し混乱するかもしれないが、すぐに元通りだ。君は、この学園の理想を体現した人間になれるんだ」
体を覆うカプセルの蓋が、ゆっくりと閉じる。
――俺は……俺の生きたい人生を生きる。俺の物語の主人公になる。七海に誇れる、風宮を守れる俺になる。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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