そして、彼女は泣いた3 ページ49
．
……全く似ていないのに、似ている二人。
風宮は俯きながら、弱々しく狛枝の胸を押した。
「……ごめんなさい」
「……その男が好きなの？」
狛枝の言う好きが、恋愛としての好きだと言うことは解ってる。日向が好きか。しばらく考えて、風宮は首を横に振る。
「分からない……でも、話し相手になってくれて、嬉しかったんだ」
「君をこんな風に悲しませる男なんかが？」
声のトーンが引くなる狛枝の方に顔を上げる。
悲痛に歪めて、納得がいかないと物語っていた。
風宮はそれを目の当たりにして胸が痛むが、狛枝の腕を退けて、はっきりと答える。
「貴方が思ってるほど、悪い人じゃないよ」
涙を手の甲で拭い、風宮は僅かに頬と目許が柔くなる。
笑顔とは呼べないけれど、日向に言われて別れた後も風宮は一人で笑う練習をしていた。
その微量の変化に狛枝は気付いて面食らっていたが、寂しくなった腕に視線を落として はは…… と乾いた笑い声を漏らす。
「……そりゃあそうだよね……ボクなんかが人を好きになるなんて、烏滸がましいって最初から解ってたけどさ……はぁ、全く酷い不運だよ」
今でもキノコ栽培でも出来そうなほど暗い雰囲気を出している狛枝に、何だか申し訳なくて謝ろうと風宮は口を開きかけたが、そんなのは必要なかった。
「でも、不運が大きければ大きいいほど次の幸運も大きくやって来る！うん、この不運はプラスに捉えよう！」
「………」
やっぱり狛枝は狛枝だった。
ガラリ と変わって満面な笑顔で自分を抱き締める狛枝を目の前に、風宮もいつもの調子に戻りつつある。
泣いて少し目が赤くなっているも、心は少しだけ軽くなったような気がする。現実は何も変わらないけれど。
「……ありがとう。一人言を聞いてくれて」
「あ、お礼なんていいって」
「……え」
無駄のない動作で、狛枝は胸の辺りまである白い髪を一掬いしてキスを落とす。
「誰も諦めたなんて言ってないし、いつか振り向かせて見せるから」
「……貴方、本当に執着心強いね」
「あはっ、それほどでも！」
「褒めてない」
こちらに接近して来ている狛枝から距離を置いて「来ないで」と風宮が冷たく言うと「いつもの風宮さんだね！」となぜか嬉しそうに言ってくるので、最終手段として逃げるを使うしかなかった。
その背中を愛おしく見つめて、狛枝は一人呟く。
「……どんな顔も魅力的だけど、やっぱり笑った方が可愛いね」
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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