そして、彼女は泣いた2 ページ48
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「……短い間だったけど、私の話し相手になってくれた男の子がいたの……お日様のようでいい人だった」
目を瞑ると、日向の顔が浮かんでくる。
初めて会った時は、憧れを抱いたような表情をしていた。それと、ちょっと戸惑うような顔。会う回数が増えると普通の反応ばかりしていたけど、時々綻ぶ笑顔が、そのありふれた笑顔が見ていて飽きなかった。
「けど、彼は自分が嫌いだった……何者にもなれない自分を憎いほど嫌ってた……それを知ってて私は、止めなかった……」
退院した日を風宮は思い出す。身形を整えないまま無理矢理体を動かして、日向を探しまくったあの日。プロジェクトの返事の時間が迫っていた時、やっと見つけた日向の姿は、全てに絶望したように疲れきっていた。
風宮はゆっくりと目を開いて、顔を上げる。
視界が揺らいでいた。透明な水滴が紫の目に浮かんで、瞬きした途端に涙は頬に伝う。
息を飲む狛枝。震え出す手に力を込め、風宮は涙声で呟く。
「……そのままで良かったのに……変わらなくても良かったのに………いなくなってしまうなんて、やだよ……」
感情の蓋が決壊してしまった。
ずっと人形のように表情を無くしていたのに、涙が はらはら と下に落ちていく。
視界を遮る水滴を払おうとした風宮の手を、不意に掴まれて引っ張られる。狛枝だった。一回りも小さい風宮を、自分の腕の中に閉じ込める。
「……ボクじゃダメかな」
「えっ……？」
狛枝の意味が、抱き締めるという行為が、今の風宮では頭が回らなくて理解出来なかった。
おそるおそる見上げると、狛枝は眉を歪めながら哀愁帯びている。無防備で見つめている風宮の顔に近付け、狛枝は唇に口付けをした。風宮は目を見開き固まる。
壊れ物を扱うような優しいキス。数秒して狛枝は顔を離す。そっと風宮の頬に指先が触れ、涙を指の腹で拭う。
「ねえ、泣かないで……君は笑った方が似合うよ」
――お前、笑った方が似合うと思うぞ。
「……！」
「ボクは、風宮さんが好きなんだ」
「……狛枝、くん」
頭が クラクラ してきた。
日向が言った言葉を、狛枝が同じことを口にするなんて。脳裏に日向の声が聞こえてしまい、風宮はまた泣きそうになるが、この温もりは前にも感じたことがある。そう、入院していた時だ。誰かに手を握ってもらって日向と勘違いしていたが、あれは狛枝だったのだと理解する。
日向と狛枝。声も体躯も何もかも違う二人に共通するのは、希望ヶ峰学園に対する執着心。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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