芽生え始める恋心 ページ46
．
「……それと壁ドンは私じゃなくて、好きな子にやってあげなよ。黙ってればカッコいいんだから」
「……え？」
するり とその場から抜け出して、何事もなかったように受け付けの方に歩いていく彼女の背を眺めながら、茫然と立ち尽くす。……え、今なんて？好きな子？カッコいい？
頭が熱されて、病的にも見えそうな白い頬がみるみる内に火照っていく。
「……外見を褒められたの、生まれて初めてだなぁ」
話をまた流されてしまったけど、純粋に嬉しかった。
……カッコいい、か。職員が来るまで、狛枝は自分の手で顔を覆いずっとしゃがみこんでいた。
．
――忘れたら？……日向くんのこと何か忘れて、貴女はクラスとの思い出を作った方が良いんじゃないかな。
２度と会うことが叶わないというのに、なにも知らないまま日向を待ち続ける七海に、風宮がかけた言葉だ。
今日は会えるかもしれない、という淡い希望なんか捨てて、日向創がいない事実を知る、という深い絶望も捨ててしまえば楽になれたのに。
忘れて、逃げ出して、クラスとの楽しい思い出を描いていれば一番幸せになれたかもしれないのに、彼女は結局どこまでも希望側だった。……側は可笑しいか。前向きだった。
研究所に何度か出入りして、外科と内科の施術をガラス越しで日向の体を、頭を弄られていく生々しい様をずっと見なければならなかったのは、流石の風宮も顔をしかめるしかなかった。
体を覆うカプセルから一度出てきた時、まだ人格が残っていたようで、言葉にならない呻き声を上げ、医療器具を散乱させながら暴れていたのを鮮明に浮かぶ。
まるで、日向創として消えたくないと訴えているようで見ていられなかった。それを横から皮肉に囁きかけるのだから、評議員も研究者も皆ろくでもない。
狛枝に付きまとわれていた結果、大嫌いでくだらない才能までも当てられて、風宮の抑えていた心の蓋が今にも開いてしまいそうだった。
時間はあっという間に過ぎて、年を明け、今は一月の下旬。
狛枝に遭遇しないように手当たり次第、今まで通っていた場所全て出向かなくした。が、彼なら不運を糧にして会いに来そうと予感していたが、くだらない才能が勝手に作用したらしく、あれっきり会うことはなかった。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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