希望と絶望の先にあるのは【前編】

不自然は確信に1 ページ44

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――私も無期限の停学だから。

結局何の才能か教えてくれなかった代わりに、彼女はあっけらかんと狛枝に教えた。
処罰される理由が解らずに尋ねたら、目撃者が体育館にいる風宮を見て犯行に関わってると思い込み、その噂を無くす為に無期限の停学を学園長が下した、という話だった。
筋は一応通っているが、今一しっくりとこないまま狛枝は思案顔で散歩する。

喫茶店で談話した日から何週間か経つ。
その間、狛枝は様々な不運を重ねながらも、同時に風宮と遭遇する、という幸運を手にしていた。口を割らなければ自分の知恵と、足と、才能を使えばいいと考えて、偶然を装いながら接近した。そんな私益まみれの狛枝の内情を、洞察力に優れている風宮が知らないわけがなく、うんざりとした様子ではあったが、特別何かを言うわけでもなく、放っておくという選択にいたっているのを本人は知らない。
狛枝はそれをプラスに捉えて、こんなくっつき虫と一緒にいてくれるなんて、流石は心の広さも超高校級だ と一人解釈していたが、分かったこともある。

風宮莉愛は家族がいない。友達と呼べる存在はいなく、それなりに仲良くしていた安藤流流歌と、十六夜惣之助は既に退学。
趣味は当たり前に読書。かなりの甘党で、好んで飲むのは紅茶。嫌いなものは脂っこいもの。主食はご飯よりパン派らしい。
甘いものは得意じゃないが、それ以外は好みが同じだと意気投合して、狛枝が何のパンが好きか、なんてくだらない話をしたのもまだ日が浅い。

「……一体、どんな希望を持ってるんだろう」

ポツリ と言葉を無意識に紡ぎ、狛枝はまたいつもの図書館に向かう。
……不明点と言えば、何よりあの実技試験が印象的。が、過ごしていく内に狛枝はもう一つ見つけた。と言うよりは前から気にしていたけれど、それが確信に繋がったのだ。
自分の幸運の力が不安定だと言うことを。
幸運でも様々なタイプがあるかもしれないが、狛枝の場合は大きな不運が襲い掛かるほど、それに見合った幸運が訪れるものだった。
しかし、風宮と一緒にいる間“だけ”は一切不運が来なかった。

「わぶっ！」

不意に、強い突風に襲われる。
どこからか新聞紙が飛んできて、狛枝の顔面に張り付く。
風はすぐに納まり、立ち止まって紙を剥がす。
内容を見てみると、狛枝が起こした実技試験の記事だった。奇跡。負傷者ゼロ!!!!!

「……ふーん、なるほどねぇ」

何かが分かったような顔で、狛枝は新聞紙を捨て、図書館の中に入る。

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