happiness3 ページ43
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「同情なんてしないよ。罪もないのに知り合いが事件の片棒を担ぐ嵌めになったんだから」
「……え」
嘘 と狛枝は目を丸くする。作っていた笑顔が一瞬で崩れた。
どうしよう、何も知らずに彼女の知り合いを悪く言ってしまった。脳内でぐるぐると言い訳を考えた先に、あれ？と狛枝の思考が止まる。
何をそんなに、自分は焦っているのだろう。
「……ま、起きてしまったことを引きずっても無意味なんだけど」
フォークをケーキの前に戻す。
頬杖をつきながら、風宮は半分ほど食べた苺タルトをぼんやりと見ていたが、真上からフォークで突き刺した。
カチャン と生地と苺を貫いて皿が鳴る。
「……貴方は、他人を過大評価し過ぎてる。人は簡単に挫折するし、絶望もする」
「それは、違うよ。希望の象徴である超高校級の彼らだからこそ、どんな困難も乗り越えられるんだ！ダメな人間がどれだけ努力したって、価値ある人間にはなれっこないし……精々希望の糧にしかならない」
奇怪的発言を熱弁している狛枝。普通の人間なら引いてしまうレベルだが、風宮は平然と突き刺した苺タルトを食べやすく切って、食する。
「……例えばクラスが人質にされて、自害すれば助けてやるって言われたら、希望の為に死ねるの？」
「それで皆が助かるなら」
即答。清々しい笑顔で狛枝は答えた。
「そう」
一口、また一口。最後は苺だけが皿に残った。
表面をナパージュでコーティングされた赤い実を突き刺して、風宮は食べた。狛枝も冷めてしまったコーヒーを飲み干す。
いつの間にか店内に流れていたピアノの音が消え、物静かだ。ふと狛枝がカウンターの方を視線に映すと、店の人がいない。どこに行ったのか。
もしかして気を遣って持ち場から離れたのか と考えながら、紅茶を少しずつ味わうように飲んでいる風宮を見て、何とも言えない気持ちになる。
「……狛枝くんは、不確かで見えないものに縋るしか出来ないんだね」
目と目が合う。見透かされているようだった。
同時に狛枝は本能的に感じる。何度も逆境を経験したことがあるような、純度の高い希望と絶望を練り菓子のように丁寧に練り合わせ、混ぜ合わせたような瞳をしている。
白でもない、黒でもない。そう、灰色。
今まで逢ったことがないその感覚に、狛枝の体が ゾクゾク と震え上がった。
「そうやって話を逸らすの上手だけどさ、まだ風宮さんはボクの質問に答えてないよ？」
飲み終えたティーカップを置いて、風宮は知らん顔。
「……さあね」
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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