happiness2 ページ42
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「予備学科の方で二人の女子生徒が不審者に殺されたのは、風宮さんも噂で聞いてるはずだよ。その被害者の一人はね、小泉さんの友達だったんだ。気安く彼女に声を掛けられないし、無闇に励ますもんじゃない……いつの間にかクラスもギクシャクしちゃってね、そんな最中に実技試験が始まるだなんて、許せなかった」
軽やかなピアノの旋律が、今は遠く聞こえる。
狛枝の話を聞いている風宮の顔は、一切変化がない。
「ボクはね、万全な状態で試験を受けてほしかったんだよ……皆の才能が最高に輝く瞬間を、この目で見たかったんだよ」
「……それで３人の生徒が退学に」
抑揚のない問い掛けに、狛枝はさも当然のように明るい声色で告げた。
「超高校級の人が３人も退学だなんて絶望的だよね……。でもさ、クズごときの幸運も乗り越えられないようじゃ、彼らは希望とは呼べないよ！」
「………」
風宮はなにも言わない。
フォークを手にして、苺タルトに視線を落としている。一口サイズに生地を切って口に運ぶ。甘いケーキの匂いがこちらの方まで香り、狛枝は徐にコーヒーを二口飲む。
「……実は、ボクも風宮さんに聞きたいことがあるんだ」
不敵に頬を歪める狛枝は、そっと囁きかけた。
「君の本当の才能って、何？」
フォークを動かしていた手が止まり、風宮は顔を上げる。
「……読書家だけど」
「思うんだよ。読書家と言う才能は建て前で、別に違う才能があるんじゃないかな……って」
あの実技試験の日。狛枝が仕込んだ爆弾で体育館が崩壊した時、近くにいた風宮は無傷だった。その上、瓦礫に埋もれていた教師も、生徒も、取材の人間も、皆大した怪我などしていなかった。
いくら自分の幸運が作用していたからと言って、死人が一人も出ないのも、それ相応に負傷していないのも可笑しい。
そう考えると、あの場にいた風宮が何かをしたとしか考えられなかった。
狛枝はカップをテーブルに置いて、風宮に尊敬のような愛おしく見るような視線を向ける。
「ねえ、教えてよ……もしかしたら君が、ボクが求めている絶対的な希望かもしれない」
不意に風宮がため息を吐いた。
「……貴方、可哀想だね」
悲しいような、呆れたような、つまらなそうな、どうでもいいような。風宮は、その全てを混ぜ合わせたような複雑な目の色をしている。
意味が分からず、狛枝は固まって瞬きする。
フォークを手にしたまま、風宮は狛枝の顔の前に指す。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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