happiness1 ページ41
．
「犬のマネをするんじゃないの？」
「……どういう考えしたらそんな発想が浮かぶの」
「……あ、手を繋ぐんだね！でも、希望溢れる風宮さんの手が汚れるから」
自虐を含ませながら重ねた手を引っ込めようとしたが、風宮はどうもしない様子で、狛枝の手を繋いだ。
「こうした方が巻き込まれなくてすむ……と、思うから」
狛枝の手を引っ張りながら歩き出す風宮。
落差が激しいせいで、狛枝がやや腰を傾けながら歩くという形になっている。歩きにくい。けど、これは布石。謎だらけの風宮から誘いを貰えたのも、手を繋いで貰えることも、狛枝にとっては全て幸運。
「はぁっ……なんて優しいんだろう、ノロマでグズのボクと手を繋いでくれるなんて……！」
無邪気な子供の目で後ろ姿の風宮を見つめるが、全てスルーされる。周りから視線を感じるも、狛枝は気にする様子もなく あはは！ と笑う。
happiness。訳すと幸福という意味だ。
風宮に連れて来られたのは、古風でシックなインテリアが並ぶ喫茶店だった。店内は思いの外小さく、カウンターは７席、２席テーブルが２つしかないが、色とりどりの植木や花もあるおかげで、反ってこの狭さが味わい深いかもしれない。
そこに豆を挽いた濃い匂いと、流れてくる綺麗なピアノのBGMが狛枝の嗅覚と聴覚が刺激される。
人に見つけられにくい場所に建っているこの喫茶店は、やはりと言うか、棚には本が詰まっていて、客は自分たち二人だけ。
彼女らしい と思いながら狛枝は自然と頬が緩む。
目の前には注文したブラックコーヒーが置いてあり、向かい側に座っている風宮の方を見ると、紅茶と苺タルトが並べられている。
思えば、こうやって誰かと手を繋ぐことも、誰かと一緒に店で談話をするのも、狛枝は凄く久しぶりだった。
「凄くいいお店だね。よく来てるの？」
「……たまにね」
風宮はティーカップに手を伸ばす。紅茶を一口飲んで潤わせてから、密やかな声を発した。
「……本題に入る前に一つだけ。入院してた時、クマのぬいぐるみを贈ってくれたよね。ありがとう」
「ううん。クラス皆で夏祭りに行ったとき、くじ引きで当てたやつだから」
「……そう」
カップをソーサーの上に置く。風宮はしばらく考えていたが、狛枝に顔を向けた。
瞳は冷たく光っているように見える。
「どうして、自分を犠牲にしてまで実技試験を中止にさせたの？」
狛枝は変わらず笑みを浮かべたまま、淡々と話し出す。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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