読書する彼女の顔は ページ40
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待ち合わせ場所は彼女の才能らしいとも言える、学園から近場の図書館だった。
カジュアルな私服姿の狛枝は、左手首に巻いてる腕時計を見る。ただいま10時30分。指定されていた時間よりも30分も遅れてしまい、もう帰ってしまっただろうか と不安を胸に辺りを目で探していたが、案外簡単に見つけることが出来た。
一番奥の窓際に一人、風宮は本を読んでいる。
その格好は制服姿だが、ページを捲る動作と、本の世界にのめり込んでいる、無表情とは違う凛々しさが含まれている顔に見とれてしまいそうになったが、狛枝は足早に歩み寄るなり、声をかけた。
「ごめん、待たせてしまって」
しかし風宮は無反応。
視線はずっと本に注がれたままで、身動き一つしない。
一息つくと、狛枝は風宮の肩を軽く叩いた。
「風宮さん」
痺れるような囁き声。ようやく風宮が気付いた。
「……あっ、もうそんな時間」
「いや、30分遅刻してしまったんだけどね」
「……大丈夫、範囲内だから」
そう言って風宮は本を閉じ、目許を擦る。
範囲内？まるで自分がそうなると知っているように聞こえるような。
風宮は席から立ち上がり、本をしまいに行く。
その間、狛枝は立ち入りが少ない客と数多とある本を見渡しながら考える。前からこの図書館は気になってはいたけど、うん。静かで、客も少なくて結構良いところかもしれない。
少しして、マフラーを直しながら風宮は戻って来た。
「じゃあ、行こっか」
「え、どこに？」
「……ゆっくり話せる場所」
そう一言を残し、風宮は先に外に行ってしまう。
小さな背中を追いかけようとした狛枝は、自分の足でもつれた。咄嗟に右足が前に出たおかげで転ばずに済んだが、体に ひやり と覚える。小さな不運。狛枝は一人笑みを刻みながら、遅れて後を着いていく。
外に出るとすぐ、風宮がいた。待っていてくれたのか、狛枝を見るなり「……あまり離れないで」と読めない表情で小さな声で言われる。
少し頭を下げて へらり と狛枝は笑う。
「ボクなんかの為に気を遣わせちゃってごめんね」
「……何かあったの？」
「大したことないよ！中で転びそうになっただけだから」
「………」
視線を外し、風宮は考える素振りをした。
それもすぐに終えたらしく、狛枝に手を差し向ける。
色白で小さな手。まるで小学生のようだ。狛枝は風宮の手の上に自分の手を ポン と重ねた。それだけ。
風宮から 何やってるんだこの人 と言いたげな目を向けられる。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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