狛枝凪斗の憂鬱と驚愕と消失5 ページ38
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狛枝より近くにいた風宮はしかし、襲いかかる瓦礫達を前に逃げることはせず立ち止まった。当たるはずの破片は全て、そこに見えない何かがあるかのように、ギリギリの所で避けていく。
間近に見ていた狛枝は訳が分からないという顔をしていたが、知らずに孤を描いて笑っていた。
「何もかも上手くいかないと思ったら、なんだ……何もかも上手くいって、結局いつも通りだった」
「由々しき……事態ね」
複数の人の気配が感じる。
振り返ると、雪染と他の教師が何人かが集まっていた。
跡形も無くなってしまった体育館を背に、風宮は自分の腕を抱きしめながら、変わらず無表情で呟いた。
「……くだらない」
．
一つの新聞を渡された。
奇跡。死傷者ゼロとビックリマークが五つも書かれたそれは、あの実技試験の一連を書き記したものだった。
安藤流流歌、十六夜惣之助、忌村静子は退学処分になり、雪染ちさは予備学科に移動、担任である黄桜公一は謹慎処分。狛枝凪斗は、無期限の停学で済んだ。
校長室に呼び出されて風宮はその説明を学園長から聞き、持っていた新聞にシワが生まれる。
……日向も、雪染も、黄桜も、流流歌も、十六夜も、忌村も皆いなくなってしまった。皆自分と関わった人。
首謀者である狛枝を今にも探して、何故こんなくだらない事をしたのか問いただしたい気分だが、この不運が彼だけのせいじゃないのは風宮は解っていた。
一緒にいた黄桜が新聞を風宮から抜き取り、吹っ切れた顔で口を開く。
「これは莉愛ちゃんのせいじゃないよ。そう落ち込まないで」
「……落ち込んでるように見えますか」
「そりゃあ……ね、俺には泣きそうに見えるよ」
眉を八の字にして穏やかに笑みを浮かべる黄桜は、顔を伏せている風宮の頭を撫でた。
「しかし風宮くんがそこにいてくれたおかげで、死傷者が出ずに済んだ。……学園長として礼を言いたい、ありがとう」
そう言って学園長は深々と頭を下げる。
学園を纏める人が生徒にお礼をするなんて、周りからすれば滑稽だろう。
風宮は深呼吸して、ゆっくりと顔をあげた。
落ち着き払った表情をしているが、その紫の目は潤みを帯びていたように見える。
「それで、私の処分はどうなるんですか」
頭に置かれていた手が離れた。
「いやいや、莉愛ちゃんのおかげで助かったんだから無しでしょ」
「貴方に聞いてない」
黄桜に一瞥してから、学園長に視界を映す。
「……私も、退学か停学にしてくれませんか」
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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