全ての未来にさよならを 裏 ページ31
．
「……これからどこかに行くの？」
「ああ。早く行かないと」
「………そう」
いつもに増して、何を考えているのか分からない風宮の様子に違和感を感じたが、日向は口に虚ろな笑みを浮かべる。
「また話をしような。……もっと、風宮のこと知りたいからさ」
「……え？」
顔を上げるなり、思いもよらなかったような色をうっすらと浮かばせていたのに、それ以上反応はなかった。
一瞬不安げな影を掠め、何か言いたげな表情をしていたようにも見えたのに、日向はその僅かの異変に気付けず、風宮に背を向け歩きだした。
呼び止められることはなかった。
体が、何となく重い。火が消えたように心も冷え込んできて寒い。七海の笑顔が、風宮の言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
垂れていた右手に強く力をいれた。
――……俺は、皆の希望になる。二人に誇れる俺になる。
．
「……日向くん」
彼の背中を見届け一人になった風宮は、片手で顔を覆った。
夕日が少しずつ傾いていき、夜が近づいていく。
「……才能が全てじゃない……希望なんかにならなくていいんだよ」
自分を落ち着かせるように深呼吸する。
もうどうにもならない事に胸に小さな痛みを感じるが、ゆっくりと上がってくる感情を抑えつけた。
不意にスカートのポケットからスマホが鳴りだし、取り出して見る。顔から手を離すと、黄桜と名前が浮かんでいた。
一度病院に戻り普段の格好になった風宮は、直ぐ様黄桜がいる学園長室に足を運ぶ事になった。
すでにその計画を知っている人達が集まっているのを解れば、嫌な予感しかしない。目眩がしてきそう。黄桜の隣に座れば「怪我大丈夫かい？」と心配そうに声をかけられたが、頷くしかなかった。
全員が揃うと学園長は、重苦しくそれを口に出す。
「試験体がプロジェクトの決断をしたそうです」
つまり、人工の希望を作るカムクラプロジェクトの実験体である日向創が、それを受け入れたと言うことだった。
膝の上に絡ませていた両手に、風宮は力が入る。横から黄桜の声が上がった。
「イヤだねぇ……人工の才能、人工の希望か」
「もう止まらんのだろうな……」
天願は風宮を見ると、哀愁帯びた顔で口を開く。
「……皮肉じゃな。お前さんは彼と仲が良かったのに、こんな結末になるとは」
「……」
「本来、試験体と出会うはずが無かったんです」
「……まあ、それがこの子の本当の才能だからなぁ」
それぞれの視線が感じるが、風宮は下を向いて黙っているしか無かった。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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