全ての未来にさよならを ページ30
．
――七海……俺は友達のお前に胸を張りたかった。
自分には才能がある。
こんな凄い事が出来るんだって。
あんなに真面目に相談を聞いて、諭してくれた風宮の期待にも、結局答える事が出来なかった……。
才能を持った希望溢れる本科生ではなく、なんの取り柄もない、無個性な自分といた方がいいって言ってくれた時は、心の底から嬉しかった。
だからこそ、九頭龍菜摘に突き飛ばされて大怪我をしてしまった風宮を、この手で守ることも、助ける事も出来なかった己の無力さに呪った。
才能ない人間は一緒にいる資格なんてない。
その通りだと思ったし、対等に接してくれていた風宮に、恩を仇で返すようなことをして傷付けてしまった。
ただ喚いて、足掻いて、何も出来なかったけど、空っぽの自分だからこそ出来る事もあるはず。
「……日向くん！待って！」
日向は足を止めた。
とても懐かしい声。実際にそんなに日は経っていないが、その儚げな声音を聞いて振り返った。
「か、風宮……お前なんで！」
退院したのだろうか。
いや、あんな勢いよく頭を打って気を失っていたのに、こんな早く動けるわけが……。
よく見れば、風宮は長い距離を走ってきたらしく、胸を押さえながら息を切らしている。制服も少し乱れ、髪型にいたってはいつものおさげ髪ではなく、下ろしていた。
トレードマークと言っても過言ではない、白のマフラーも巻いていない事に、よっぽど急いで来たんだと日向は推測した。
「……どうしても、貴方に会いたくて」
「俺に……？」
何度か呼吸をすると風宮は落ち着いたようだ。
身長に差があり過ぎて必然的に上目になる。
「……あの時運んでくれたの日向くんでしょ？助けてくれて、ありがとう」
それを聞いて、日向は ツキッ と胸に針を刺されたように傷んだ。
「……ありがとうだなんて、俺と関わったせいでお前は怪我をしたのに」
「それは違う」
はっきりと風宮は言い切った。
胸を押さえていた手を下ろす。
「あれは自己責任だよ。日向くんのせいじゃない」
真っ直ぐと見つめられ、日向は眉間にシワを寄せる。
終わらない口喧嘩を仲裁に入っただけなのに、自己責任と一言で片付けられるわけがない。床に広がるほど流血して、命も脅かされたのに。
「……そんなに自分を責めたら辛くなるだけだよ」
視線が そろそろ と落ちていき、風宮は俯いてしまった。
両手が僅かに震えている事に気付き、日向は「風宮」と名前を呼ぶが、抑揚の少ない声に遮られてしまった。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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